アニマルシェルターの獣医療(18)  救急医療

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける獣医療について見ています。

 

6.5.2 Emergency medical care(救急医療)

 

救急医療計画の策定

An emergency medical plan must be in place to provide appropriate and timely veterinary care for any animal who is injured, in distress, or showing signs of significant illness. 

けがをしたり、苦しんだり、重大な病気の兆候を示したりしている動物に対して、適切かつ適時に獣医療を提供するための救急医療計画を整備しなければならない。(p34)

 

The emergency medical plan must indicate how staff will recognize and report medical conditions requiring emergency care. 

救急医療計画には、スタッフが緊急治療を必要とする病状をどのように認識して報告するかを明示しなければならない。(p34)

 

The emergency medical plan should specify whether emergency services are provided on site or through an outside veterinary clinic. 

救急医療計画では、緊急医療が現場で提供されるか、外部の動物病院を通じて提供されるかを指定するべきである。(p34)

 

Foster care providers should be given clear instructions about how and when to access emergency and after-hours care.

預かりボランティアは、緊急時や時間外診療を受ける方法とタイミングについて、明確な指示を受けるべきである。(p34)

 

【のらぬこの解説】

アニマルシェルターには、収容動物に適切な救急医療を提供できるリソースと手順が必要です。外部のリソースに頼らざるを得ない場合、連携の手順も必要です。

 

やむを得ぬ場合の安楽殺

If the emergency medical plan cannot be implemented or fails to relieve suffering, the animal should be euthanized. 

救急医療計画を実行できない場合、または苦痛を和らげることができない場合は、動物を安楽殺するべきである。(p34)

 

【のらぬこの解説】

安楽殺については改めて詳しく触れますが、動物が苦しんでいてその苦痛を取り除くほかの手段がない場合、安楽殺をためらうべきではありません。

 

動物の法的地位

The legal status of the animal must not prevent treatment to relieve suffering. 

動物の法的地位が、苦痛を和らげるための治療を妨げてはならない。(p34)

 

【のらぬこの解説】

シェルターに収容されている動物は、所有権などの権利関係が不明瞭なものも多く、必ずしも「合法的に」保有しているとは限りません。それでも動物の苦痛緩和のための処置をためらってはなりません。もちろんそこには、やむを得ない場合の安楽殺も含まれます。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022