2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける獣医療について見ています。
6.5.3 Responding to infectious disease(感染症への対応)
隔離
Shelters must have a means of isolating contagious animals.
シェルターには、感染症の動物を隔離する手段を備えなければならない。(p34)
Animals with a suspected infectious disease must be isolated until diagnosis by a veterinarian or treatment determines them to be a low risk to the general population.
感染症が疑われる動物は、獣医師による診断または治療によって一般集団に対するリスクが低いと判断されるまで隔離しなければならない。(p34)
Allowing animals with severe infectious disease to remain in the general population is unacceptable.
重度の感染症にかかっている動物を一般集団に残すことは許されない。(p34)
【のらぬこの解説】
感染症が疑われる動物は、アニマルシェルター内の隔離室に収容するか、動物病院に入院させたり、ボランティアに預けるといった手段で、他の収容動物から隔離する必要があります。何らかの理由でそれらの手段が使えない場合、informed adoption(「申告譲渡」:感染症に罹患していることを伝えたうえで、納得してくれる人に譲渡する)、協力団体への移送、また場合によっては安楽殺を検討する必要があります。
重篤な、または合併症を伴うような症例でなければ、疾病ごとに定めた標準的な感染症管理手順に基づき隔離室でケアを行い、動物が感染のおそれが低いと判断されれば元の集団に戻されます。
原因の究明
When the number of cases increases above typical for the shelter, when signs are severe or not responding to treatment as expected, and when a zoonotic condition is suspected, diagnosis or identification of specific pathogens should be sought.
症例数がシェルターの標準的な数を超えて増加した場合、重症である場合、または予想通りに治療に反応しない場合、そして人獣共通感染症が疑われる場合、診断または特定の病原体の特定を求めるべきである。(p34)
When an animal dies from unexplained causes, a necropsy should be performed.
動物が原因不明で死亡した場合、検死を行うべきである。(p34)
【のらぬこの解説】
重篤な感染症またはアウトブレイクのおそれがある場合、適切な対応を行うため、簡易検査や外注検査により原因微生物を特定する必要があります。原因不明の動物の死因の究明は一般的に肉眼所見で行われますが、微生物学的検査や組織学的検査が必要になることもあります。
※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022