アニマルシェルターの獣医療(20)  アウトブレイクへの対応 その1

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける獣医療について見ています。

 

6.5.4 Outbreak response(アウトブレイクへの対応)

 

アウトブレイク時のリスク評価

During an outbreak, a risk assessment to identify potentially exposed animals must be performed based on the confirmed or suspected pathogen. 

アウトブレイクの際には、確認された病原体または疑われる病原体に基づいて、暴露された可能性のある動物を特定するためのリスク評価を実施しなければならない。(p34)

 

 【のらぬこの解説】

outbreakとは「発生」という意味で、「ガイドライン」では

 

・occurrence of more than the usual number of animals affected by a disease or syndrome(疾患や症候に罹患した動物の数が通常より多いこと)

・increase in the severity of cases(症例の重症度が増すこと)

 

のいずれかであると定義されています。アウトブレイクは「集団発生」のイメージがありますが、1頭の動物であっても重症度が増せば、それはアウトブレイクです。

 

動物の隔離

Physical separation must be established between sick, exposed, at-risk, and unexposed animals or groups of animals.

病気の動物、暴露された動物、リスクが高い動物、および暴露されていない動物または動物群の間は、物理的に分離しなければならない。(p34)

 

In order to prevent tracking of pathogens from contaminated to uncontaminated areas, animal handling and foot traffic should be limited during disease outbreaks.

汚染区域から非汚染区域への病原体の移動を防ぐために、疾病のアウトブレイク中は動物の取り扱いと人の往来を制限するべきである。(p34)

 

【のらぬこの解説】

アウトブレイクの際には、動物を当該感染症へのリスクによって分類する必要があります。これは発症しているか否かという観点だけではなく、「発症(sick)」「発症動物に暴露(exposed)」「感染リスクが高い(at-risk)」および「非暴露(unexposed)」の4群に分類されます。隔離の方法は対象とする病原体やシェルターの規模などにもよりますが、ほとぼりが冷めるまで隔離して管理すればよい場合もありますし、ひどい場合にはシェルターの閉鎖(動物の受入れなど、動物の流れの停止)が必要になるかもしれません。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022