アニマルシェルターの獣医療(23)  群管理と申告譲渡

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける獣医療について見ています。

 

6.6 Population health surveillance(集団健康調査)

Shelters should track animal population health trends (e.g. morbidity and mortality) and develop targeted strategies to address concerns. 

シェルターは、動物の個体群の健康に関する指標(罹患率や死亡率など)を追跡し、懸念事項に対処するための的を絞った方法を策定するべきである。(p34)

 

【のらぬこの解説】

シェルターメディスンにおいては、群管理を基本とします。個々の動物の健康ももちろん重要ですが、集団としての健康も同じくらい重要です。個体群の健康指標は、個体群管理手順の不備や不履行を反映している可能性がありますので、指標のモニタリングを定期的に行うべきです。

 

6.7 Rehoming considerations(譲渡に際しての考慮事項)

Adopters or others receiving animals from shelters should be informed about any disease or condition known to be present at the time of outcome. 

譲渡などによりシェルターから動物を引き継ぐ人は、その時点で存在することがわかっている病気または状態について知らされるべきである。(p35)

 

Shelters should have and disclose policies that specify whether or not they provide care for medical conditions that are ongoing or occur after adoption. 

シェルターは、治療中または譲渡後に発生した症状についてのケアを提供するかどうかを指定する方針を作成し、開示するべきである。(p35)

 

【のらぬこの解説】

アニマルシェルターによる保護動物の譲渡は、かつては健康な動物のみを対象としていましたが、けがや病気の治療中であっても、その事実を説明し納得してくれる人に譲渡するinformed adoption(いわゆる「申告譲渡」)も一般的になりつつあります。これは「健全な動物を立派な人物に譲渡する」という、いわゆる「契約譲渡」の考え方から、「その動物の飼い主としてふさわしい人物に譲渡する」という「マッチング」の考え方へと移行していった結果ともいえます。

基本的に譲渡後の治療は新しい飼い主の責任のもとで継続されますが、動物病院併設型のシェルターであれば、シェルターが引き続き治療を提供することもあります。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022