アニマルシェルターの法獣医学(1)  一般事項

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける法獣医学について見ていきましょう。

 

8. Forensics(法獣医学)

 

8.1 General(一般事項)

 

【のらぬこの解説】

アニマルシェルターは「かわいそう」な動物を保護し次の飼い主につなげる(もしくは元の飼い主に戻す)施設です。「かわいそう」な動物の中には、飼い主などから虐待(ネグレクトを含む)を受けた動物も含まれます。虐待を受けた動物のケアもシェルターの重要な業務ですが、虐待事案に気づき行政機関に通報することもまた、シェルターの重要な業務です。そして可能な範囲において、行政機関による調査をサポートしていくことも重要です。

 

8.2 Laws and regulations(法規制)

Shelters, veterinarians, and humane investigators must be familiar with animal abuse and neglect laws in their jurisdiction and know how to report suspected cases.

シェルター、獣医師、および人道調査官は、管轄区域の動物虐待およびネグレクトに関する法律に精通しており、疑わしい事例について通報する方法を知っていなければならない。(p41)

 

Veterinarians must be aware of their state’s animal cruelty reporting requirements and liability protection statutes. 

獣医師は、各州の動物虐待報告要件と責任保護法について知っておかなければならない。(p41)

 

【のらぬこの解説】

日本における動物虐待やネグレクトに関する法律は「動物の愛護及び管理に関する法律」です。虐待の定義については、同法第44条で定義されています。同法第41法の2では、虐待の疑いのある動物を発見した際の獣医師の通報義務が規定されています。もちろん、獣医師に義務が課されているというだけの話ですので、虐待疑い事案を発見した場合には誰が通報してもかまいません。

通報先は「自治体の動物愛護管理部局」または「管轄の警察署」になります。自治体の動物愛護管理部局は、通常であれば都道府県に置かれていますが、政令市や中核市、特別区に移管されていることもあります。また連絡先は保健所だったり動物愛護管理センターだったりするので、通報先についてはあらかじめ確認しておくことをお勧めします。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022