2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける法獣医学について見ています。
8.4 The veterinary forensic evaluation(法獣医学的評価)
The veterinarian should have access to information about the scene, evidence collected, allegations, and known or reported history.
獣医師は、現場に関する情報、収集した証拠、申し立て、既知または報告された履歴にアクセスするべきである。(p41)
Evaluation and opinion formation for forensic purposes must be conducted by a veterinarian.
法獣医学的評価と意見形成は、獣医師によって行われなければならない。(p41)
【のらぬこの解説】
動物の虐待疑い事例を評価し意見を形成するのは獣医師の重要な任務です。しかし獣医師の任務は意見を提出することであって、裁くことではありません。あくまでも起訴するのは検察官で、判決を出すのは裁判官であることを忘れてはなりません。
8.4.1 Veterinary forensic examination(法獣医学検査)
A key part of forensic evaluation is a forensic physical exam or necropsy with documentation, for which shelters should have standard protocols.
記録を伴う法獣医学的身体検査または検死は法獣医学的評価の重要な部分であり、シェルターは標準的な手順を備えているべきである。(p42)
Even when cases are not medically urgent, forensic physical examinations and diagnostics must be conducted in a timely manner to preserve evidence.
獣医学的に緊急を要しない事例であっても、法獣医学的身体検査と診断は、証拠を保持するために即時的に実施しなければならない。(p41)
【のらぬこの解説】
虐待疑いにさらされた動物は、多くの場合治療を必要とする状態にあります。最優先事項は動物の治療であることは言うまでもありませんが、治療により身体状態が改善することにより虐待の証拠が消失する可能性があります。そうならないよう早急に身体検査を行うことにより証拠を保持する必要がありますし、治療は証拠の収集や記録と並行して行う必要があります。このあたりについては、あらかじめ手順を定めておくことが望ましいといえます。
※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022