2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける法獣医学について見ています。
8.4.2 Documentation(記録)
At least one photo should include identifying information.
少なくとも1枚の写真には、個体識別情報を含むべきである。(p42)
Photographs should be of sufficient quality to serve as evidence, and they should be managed to ensure proof of origin and integrity.
写真は、証拠として十分な画質を確保すべきであり、出所と完全性を証明できるように管理するべきである。(p42)
【のらぬこの解説】
動物虐待疑い事案の証拠を記録するには写真が不可欠です。一般的には動物の前後・左右・上下および異常部位の写真を撮影します。運動障害や神経障害、行動障害などの記録には、動画が役立つこともあります。
8.5 Managing evidence(証拠の管理)
Humane investigators and veterinarians involved in investigating animal abuse and neglect must be prepared to maintain chain of custody protocols.
動物の虐待とネグレクトの調査に携わる人道調査官と獣医師は、一連の管理手順を維持する準備をしておかなければならない。(p42)
Monitoring and response to ongoing treatment should be documented as evidence throughout recovery.
進行中の治療に対するモニタリングと反応は、回復中の証拠として記録すべきである。(p42)
【のらぬこの解説】
治療に対する反応についての記録は、重要な証拠となる場合があります。例えば「十分にえさをやっていたのに痩せてきた」という主張は、シェルターで適切な食事を与えて体重が増加したという記録と矛盾します。
8.6 Training(研修)
Veterinarians routinely involved in the investigation of animal cruelty should complete additional training in veterinary forensics or criminal justice.
動物虐待の調査に日常的に関与している獣医師は、法獣医学または刑事司法に関する追加の研修を修了すべきである。(p42)
【のらぬこの解説】
日本においても、環境省による公務員獣医師向けの法獣医学研修会が実施されていますし、日本動物福祉協会による研修会も実施されています。また人間の法医学関連の研修会を受講する機会があれば、それもまた有用であると思われます。
※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022