2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける動物の行動学とメンタルヘルスについて見ていきましょう。
9. Behavior and Mental Well-Being(行動とメンタルヘルス)
9.1 General(一般事項)
Shelters must provide behavioral care that considers the needs of individual animals as well as conditions experienced by the entire population.
シェルターは、個々の動物のニーズだけでなく、個体群全体が遭遇する状況を考慮した行動ケアを提供しなければならない。(p44)
All shelter personnel should receive training about common behavior concerns at a level of detail appropriate to their position and job tasks.
すべてのシェルター職員は、一般的な行動上の懸念について、その地位と職務に適したレベルの研修を受けるべきである。(p44)
All relevant personnel must be trained in animal body language, objectively describing behavior, and how to interpret and respond to animal body language and behavior.
すべての関係職員は、動物のボディランゲージ、客観的に行動を説明する方法、および動物のボディランゲージと行動を解釈して対応する方法について研修を受けなければならない。(p44)
【のらぬこの解説】
アニマルシェルターにおいて収容されている動物の健康と福祉を担保するためには、身体的ニーズは言うまでもなく、精神的なニーズにも応える必要があります。身体的な健康と精神的な影響は互いに関連しているからです。精神的なニーズは個体ごとに異なりますので、一律ではなく個別の対応が必要です。とはいえ、シェルターにおける群管理の観点からは、個体群全体の精神的ニーズにも応える必要があります。
恐怖やストレスを抱えている動物はしばしば攻撃的な行動を示し、職員やほかの動物に危害を加える可能性があります。動物が抱えるネガティブな感情を最小限に抑えることは、その動物の福祉を向上させるだけではなく、職員やほかの動物の安全性を高めることにもつながります。また動物に接触する職員は、危害防止のため動物のボディランゲージについて理解しておく必要があります。
なおMental Well-Beingを直訳すると「精神的幸福」や「精神福祉」となりますが、ここでは「メンタルヘルス」と訳しています。
※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022