アニマルシェルターの行動学(2)  ストレスと福祉

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける動物の行動学とメンタルヘルスについて見ています。

 

9.2 Stress and welfare(ストレスと福祉)

 

ストレス管理の重要性

Shelters must have comprehensive protocols in place for recognizing and mitigating stress and associated negative emotions including fear, anxiety, and frustration.

シェルターは、ストレスや恐怖、不安、欲求不満などの関連するネガティブな感情を認識して軽減するための包括的な手順を備えなければならない。(p44)

 

Animals must be monitored daily in order to detect trends or changes in well-being and respond to their behavioral needs.

well-beingの傾向や変化を発見し、行動上のニーズに対応するため、動物を毎日監視しなければならない。(p44)

 

【のらぬこの解説】

ほとんどの犬や猫にとって、アニマルシェルターへの収容そのものがストレスです。飼い主から離れ、不慣れな環境で、この先どうなるかもわからず、しかも自分の力ではどうにもならない状況に置かれるわけですから、そのストレスは計り知れません。ストレスの回避という点においては、シェルターに収容するよりも預かりボランティアに託すことが望ましいといえます。動物をシェルターに収容せざるを得ない場合、十分なストレス対策が必要です。

 

ストレスケア

Actions must be taken to respond promptly to behavioral needs that impact welfare. 

福祉に影響を与える行動上のニーズに迅速に対応するための行動をとらなければならない。(p44)

 

Any animal experiencing mental suffering, distress, or behavioral deterioration must be urgently assessed and treated.

精神的な恐怖、苦痛、または行動の悪化を示している動物は、早急に評価し処置しなければならない。(p44)

 

Alternative housing and placement options must be urgently pursued for distressed animals not responding to behavioral care. 

行動的ケアに反応しない、苦痛を受けた動物のために代替の収容と配置の選択肢を緊急に追求しなければならない。(p44)

 

Distressed animals not responding to behavioral care should be humanely euthanized when other options are not feasible or available. 

行動的ケアに反応しない、苦痛を受けた動物は他の選択肢が実行不可能または利用できない場合、人道的に安楽殺するべきである。(p44)

 

【のらぬこの解説】

精神的苦痛を示し、行動治療に反応しない動物については、預かりボランティアに託す、別の場所に移し環境を変えてみる、飼い主の元に戻すといった手段が試みられます。人間との交流に強いストレスを抱いている猫については、RTF(元の場所に戻す)や地域猫も選択肢になります。あらゆる手を尽くしても動物の苦痛を取り除くことができない場合、安楽殺をためらうべきではありません。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022