アニマルシェルターの行動学(6)  人間や他の動物との交流

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける動物の行動学とメンタルヘルスについて見ています。

 

9.5.2 Interactions with people and other animals(人や他の動物との交流)

Shelters should provide all animals with opportunities to engage in healthy social contact with people and other animals of the same species. 

シェルターはすべての動物に、人や同種の他の動物と健全な社会的接触を行う機会を提供するべきである。(p45)

 

【のらぬこの解説】

人間や同種の動物との健全な交流は、アニマルシェルターにおけるエンリッチメントの重要な要素です。ただし人間や同種の動物とどう交流させるかは、個体ごとに検討する必要があります。人間との交流は人馴れしているか否かによって異なりますし、同種の動物との交流を好まない個体もいるからです。

人馴れしている犬や猫の場合、受入れ時から人間との積極的な交流が不可欠です。何らかの事情で動物を囲いから出すことができない場合においても、外からの声掛けや猫じゃらしなどの交流は可能です。

 

9.5.3 Playgroups(プレイグループ)

Shelters should optimize human and animal safety by limiting the number of dogs in playgroups based on competency of personnel, play yard size, individual dog behavior, and shelter resources. 

シェルターは、職員の能力、遊び場のサイズ、個々の犬の行動、およびシェルターのリソースに基づいて、プレイグループ内の犬の数を制限することにより、人間と動物の安全を最適化するべきである。(p45)

 

【のらぬこの解説】

シェルターに収容されている犬を他の収容犬と遊ばせることは、犬や人間との健全な社会的交流の機会を与えます。プレイグループには、それ用に整備された遊び場と、犬の行動について精通した十分な数の職員が必要です。犬のグループ分けや遊ばせる頭数は、健康状態や行動によって慎重に決定します。職員は常に犬を監視し、攻撃や怯えなどの兆候が見られた場合は中止する必要があります。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022