2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける動物の行動学とメンタルヘルスについて見ています。
9.6 Behavior assessment(行動評価)
【のらぬこの解説】
アニマルシェルターにおいて、それぞれの動物の行動に関する情報を収集することを「行動評価(behavior assessment)」といいます。行動評価の目的は、行動とそれに伴う福祉の問題に対処することにありますが、動物の行動上のニーズを理解し適切な結果(譲渡など)につなげるという重要な目的もあります。
行動評価テスト
For example, It is unacceptable to expose cats to dogs in the shelter as a test to determine if the dog can safely live with cats because this poses a significant risk of emotional and physical harm to cats.
たとえば、犬が猫と安全に暮らすことができるかどうかを判断するためのテストとして、シェルターで猫を犬にさらすことは許されない。(p46)
【のらぬこの解説】
かつて犬の譲渡適性、特に攻撃性の有無を判定するために、SAFER、Assess-a-Pet、Match-up IIといった行動評価テストが開発されてきました。しかし20年間の研究により、こういったテストが必ずしも譲渡後の攻撃性を予見しえないことがわかってきました。逆にテストそのものがストレスになる可能性があります。特に犬の攻撃性を評価するために猫と同席させるようなテストは、動物福祉上許されません。また正式なテストには多大な時間とリソースが必要で、動物の滞在期間(LOS)を延長する可能性もあります。そのため現在においては、シェルターに収容されている動物すべてに正式な行動評価テストを実施することは推奨されていません。
行動評価の方法
An overall behavior assessment must collect and consider all the information about the animal, including history and behaviors observed during all shelter and foster interactions.
全体的な行動評価では、動物に関するすべての情報を収集して検討しなければならない。これには、シェルターや預かりボランティア宅におけるすべての交流中に観察された履歴と行動が含まれる。(p46-47)
【のらぬこの解説】
現時点で推奨されている行動評価は、客観的な行動履歴記録と、交流時における客観的な行動観察を組み合わせて実施されます。行動観察は受入時、日常のケア、医療処置、エンリッチメント、遊びおよび人間や同種の動物との交流などの際に行い、主に家庭環境で遭遇するような状況を重点的に観察します。
※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022