アニマルシェルターの行動学(10)  行動や福祉に関する懸念への対応

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける動物の行動学とメンタルヘルスについて見ています。

 

9.7 Responding to behavior or welfare concerns(行動や福祉に関する懸念への対応)

Behavior care and outcome decisions must be based on current animal behavior science. 

行動のケアと結果の決定は、最新の動物行動学に基づいていなければならない。(p47)

 

【のらぬこの解説】

アニマルシェルターに収容されている動物の行動や福祉に関する懸念がある場合、何らかの対処を行う必要があります。対処は大きく分けて「行動上のケア」と「結果の決定」の2つです。

 

行動上のケア

「行動上のケア」とは、言い換えると動物が示している問題行動を減少させることで、具体的には次のようなことがあげられます。

・飼養環境の改善と管理

・訓練

・行動修正(行動療法)

・薬物療法

「ガイドライン」の以下の項には、これらの具体的な事項について記述されています。なお「飼養環境の改善と管理」については、「施設」の項で触れられています。

 

結果の決定

シェルターメディスンにおいては、動物をシェルターに収容することそのものが精神的リスクにつながると考えます。つまりシェルターの滞在期間(LOS)が長くなるほど、問題行動の悪化や新たな問題行動の発生につながるというわけです。そのためシェルターにおける、長期間にわたる「行動上のケア」は推奨されません。

長期間のケアが必要な場合、またはシェルターで適切なケアを提供できない場合は、速やかに動物をシェルターから出し、預かりボランティアや専門機関に託すことを検討しなければなりません。また獣医師や動物行動専門家によって問題行動の改善が見込めないと判断された場合、安楽殺が検討されることもあります。

なおシェルターメディスンの文脈で“outcome”とは、動物がシェルターから出る際の「結果」を指します。この中には生きたままシェルターを出る「ライブリリース」(譲渡や移送など)と、死んでシェルターを出る(安楽殺や収容中の死亡など)ことの両方の「結果」が含まれます。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022