アニマルシェルターの行動学(13)  行動修正 その2

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける動物の行動学とメンタルヘルスについて見ています。

 

9.7.2 Behavior modification(行動修正) ※続き

 

体罰の使用禁止

It is unacceptable to use physical force as punishment to modify animal behavior.

動物の行動を変える罰として物理的な力を使うことは許されない。(p47)

 

【のらぬこの解説】

かつて犬の問題行動は「アルファシンドローム」、すなわち犬が人間をナメていることが原因だといわれていました。犬は集団生活する動物なので、上下関係をはっきりとさせなければならないという理論に基づき、しばしば暴力的な手段を用いて犬を服従させるような「しつけ」が横行していました。少なくとも21世紀の学習理論では、しつけに体罰を用いてはならないというのが常識となっています。これは人間の子どものしつけも同じです。

 

行動修正のリソース

Before implementing behavior modification, shelters must ensure they have the necessary resources to support such plans.

行動修正を実施する前に、シェルターはそのような計画をサポートするために必要なリソースを確保しなければならない。(p47)

 

Behavior modification is labor-intensive, time consuming, and must be applied consistently over a period of time in order to be successful. 

行動修正は労力と時間がかかり、成功するために一定期間にわたって一貫して適用しなければならない。(p47)

 

【のらぬこの解説】

動物の問題行動を改善するには、それ相応のスキルを持ったスタッフが必要です。また一定の期間が必要ですので、動物がその間ストレスなく滞在することができるスペースが必要です。また前述のとおり、アニマルシェルターへの収容そのものがストレス要因となりますので、行動療法が思うように効果を示さないこともあります。そのため預かりボランティアに託す、また場合によっては「申告譲渡」(問題行動を有することを開示し、納得してくれる人に譲渡する)により家庭に入れてしまった方がうまくいく可能性もあります。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022