アニマルシェルターの行動学(14)  行動薬物療法

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける動物の行動学とメンタルヘルスについて見ています。

 

9.7.3 Behavior medication(行動薬物療法)

Behavior medications must be strongly considered to address welfare concerns related to emotional health.

行動薬物療法は、感情的な健康に関連する福祉の問題に対処するために、強く考慮されなければならない。(p47)

 

Behavioral health concerns must be objectively assessed and diagnosed to ensure that medications are prescribed when indicated, with clear goals for treatment and outcome.

行動に関する健康上の懸念は、客観的に評価および診断され、治療と結果の明確な目標を持って、必要に応じて治療薬が処方されるようにしなければならない。(p47)

 

Behavior medications must only be administered under the advice of or in accordance with written protocols provided by a veterinarian, and all drugs must be dispensed in accordance with federal and state regulations. 

行動治療に用いられる薬は、獣医師の助言の下、または獣医師の指示書に従ってのみ投与しなければならず、すべての薬物は連邦および州の規制に従って調剤しなければならない。(p47)

 

When behavior medication is prescribed, it must be part of a comprehensive plan to help address the animal’s condition. 

行動治療に薬物が処方される場合、それは動物の状態に対処するための包括的な計画の一部でなければならない。(p48)

 

【のらぬこの解説】

動物の問題行動に対応するための手段のひとつとして、薬物療法も検討されます。しかし人間の心療治療もそうですが、薬物はあくまでも対症療法として補助的に用いられるべきであり、環境管理や訓練、行動療法といった総合的な治療の一部として位置づけられるべきです。薬物だけでなんとかなるというものではありません。

動物の行動治療を目的に認可された薬物も一部ありますが、多くは人間用として認可された薬物の目的外使用となります。その中には規制薬物も含まれますので、獣医師による適切な取り扱いが必要です。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022