アニマルシェルターの行動学(15)  長期滞在の動物

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける動物の行動学とメンタルヘルスについて見ています。

 

9.7.4 Animals with long-term stays(長期滞在の動物)

 

長期滞在の動物への配慮

For all animals staying in the shelter more than a few days, appropriate levels of additional enrichment must be provided on a daily basis. 

シェルターに数日以上滞在するすべての動物には、毎日、適切なレベルのエンリッチメントを追加提供しなければならない。(p48)

 

In addition to more time and enrichment activities outside of their enclosures, housing that provides animals with additional space, enrichment, and choice within their enclosure must be provided for animals remaining in the shelter long-term. 

シェルターに長期滞在する動物には、囲いの外でより多くの時間とエンリッチメント活動に加えて、囲い内で動物に追加のスペース、エンリッチメント、および選択肢を提供しなければならない。(p48)

 

【のらぬこの解説】

動物をアニマルシェルターに収容することそのものがストレス要因になりますから、シェルターへの滞在期間(LOS)をできるだけ短くすることが動物福祉上重要です。やむを得ず長期滞在(「ガイドライン」の定義では2週間以上)となる場合は、長期滞在にふさわしい環境とエンリッチメントを提供する必要があります。法的な理由などにより長期滞在が見込まれる場合は、預かりボランティアに託す方が望ましいといえます。

 

避妊去勢手術の実施

Reproductive stress from estrous cycling and sex drive can decrease appetite, increase urine spraying, marking, and fighting, and profoundly increase social and emotional stress. Therefore, animals who are housed long-term should be spayed and neutered.

発情周期と性欲による繁殖ストレスは、食欲を低下させ、尿の噴霧、マーキング、およびけんかを増加させ、社会的および感情的なストレスを大幅に増加させる可能性がある。したがって、長期間収容する動物には避妊去勢手術を行うべきである。(p48)

 

人馴れしていない動物の扱い

Long-term confinement of any animal who cannot be provided with basic care without inducing stress or compromising safety is unacceptable. 

ストレスを誘発したり、安全性を損なうことなく基本的なケアを提供できない動物の長期収容は許されない。(p48)

 

【のらぬこの解説】

人馴れしていない動物に人道的なケアを実施することは難しいため、長期間の収容(=監禁)は許されません。人馴れしていない野良猫であればRTF(避妊去勢手術の後に元の場所に戻す)が検討されますが、リターンが難しい場合、安楽殺も検討せざるを得ません。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022