アニマルシェルターの安楽殺(4)  安楽殺の方法 その1

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける動物の安楽殺について見ています。

 

10.2.1 Euthanasia methods(安楽殺の方法)

 

安楽殺の方法についての要件

Euthanasia methods must be reliable, irreversible, compatible with the species, age, health and behavior of the animal, and ensure a smooth loss of consciousness followed by death. 

安楽殺の方法は信頼でき、不可逆的で、動物の種、年齢、健康状態、行動に適合し、スムーズに意識を失いその後死に至らなければならない。(p52)

 

【のらぬこの解説】

安楽殺の方法に求められるまず最初の条件は、実施の際に動物に苦痛を与えないことです。そのうえで不可逆的(元に戻らないこと)であることが求められます。安楽殺が途中でストップし元に戻ってしまうと、そこで苦痛を感じてしまうからです。

 

鎮静剤の投与

Pre-euthanasia drugs must be administered when their use is necessary for a smooth euthanasia process. 

安楽殺を円滑に進めるために必要な場合は、前投与薬を投与しなければならない。(p52)

 

【のらぬこの解説】

安楽殺の前に鎮静剤を投与することは、一般に推奨されます。

 

薬物の使用

Each animal’s weight (actual or assessed) must be used to calculate adequate drug doses. 

各動物の体重 (実測または推定) を使用して、適切な薬物投与量を計算しなければならない。(p52)

 

Unless an animal has been verified as unconscious, intra-organ injections are unacceptable.

動物が無意識であることが確認されていない限り、臓器内注射は許されない。(p53)

 

【のらぬこの解説】

安楽殺の方法はいくつかありますが、欧米で主流となっているのは薬物投与による方法です。その中でも最も人道的とされているのが、ペントバルビタールナトリウムの静脈内注射または腹腔内注射です。意識が消失していれば、心腔内注射や腎臓内注射といった臓器内注射も容認されます。現在日本においては、医薬品としてのペントバルビタールナトリウムが入手できないため、試薬のペントバルビタールナトリウムを調合して用いるか、セコバルビタールナトリウムなどの類似の薬物を用いることになります。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022