アニマルシェルターの安楽殺(6)  環境と設備 その1

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける動物の安楽殺について見ています。

 

10.3 Environment and equipment(環境と設備)

 

安楽殺を実施する場所

A separate room should be designated for euthanasia in a quiet area away from the main pattern of foot traffic.

人の往来の多い場所から離れた静かな場所で、安楽殺のための別の部屋を指定すべきである。(p53)

 

The room used for euthanasia should be well lit and large enough to accommodate the necessary people and equipment. 

安楽殺に使用される部屋は、十分に明るく、必要な人や設備を収容するのに十分な大きさであるべきである。(p53)

 

【のらぬこの解説】

安楽殺は動物に苦痛を与えることなく安らかに死に至らしめる獣医療ですから、対象の動物が落ち着ける環境が必要です。著しく清潔である必要はないかもしれませんが、静かで明るい環境が望ましいといえます。

 

部屋に入る人

Only people with defined roles in the euthanasia process should be in the room when the procedure is being performed. 

手順が実行されているときは、安楽殺の過程で定義された役割を持つ人だけが部屋にいるべきである。(p53)

 

【のらぬこの解説】

「定義された役割」の人とは例えば、安楽殺を実行する獣医師または獣医看護師、動物の取り扱い補助者、動物の所有者、主に世話を担当していたシェルター職員、研修生などを指します。

 

動物のニーズ

The euthanasia environment must be set up to minimize discomfort and distress and accommodate the individual animal’s behavioral and physical needs. 

安楽殺の環境は、不快感と苦痛を最小限に抑え、個々の動物の行動および身体的ニーズに対応するように設定しなければならない。(p53)

 

【のらぬこの解説】

これはどういうことかというと、例えば人馴れしている動物の場合、主に世話を担当していた職員とのふれあいや声掛けによってリラックスするかもしれませんし、逆に人馴れしていない動物にとっては、極力人間が関わらない方がリラックスするかもしれません。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022