動物の輸送および移動(1)  一般事項

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、動物の輸送(transport)および移動(relocation)について見ていきましょう。

 

11. Animal Transport and Relocation Programs(動物の輸送および移動)

 

11.1 General(一般事項)

 

動物の移動

Decision-making in relocation programs must prioritize decreasing length of stay.

移動の意思決定には、滞在期間の短縮を優先しなければならない。(p55)

 

【のらぬこの解説】

アニマルシェルターが他のシェルターに動物を移動(relocation)する理由は2つあります。ひとつは動物の譲渡の機会の増大、もうひとつはそのシェルターで動物に必要なケアを提供できない場合です。しかし動物の移動には感染症拡大のリスクがありますし、その動物に対する責任の希薄化という問題もあります。特にシェルター間で動物をたらい回しにするようなことは絶対に避けなければなりません。「ガイドライン」においても、安直な移動を積極的に推奨しているわけではありません。

移動やむなしと判断された場合は、最大限の配慮をもって悪影響を排除しなければなりません。

動物の移動を検討する際の判断基準は「滞在期間の短縮」、これに尽きます。もっと具体的に言うと、移動することでより早くその動物を譲渡することができるか否かということです。もちろんそこには、シェルター間の綿密な調整が必要ですし、そもそも地元で譲渡が可能であればそれに越したことはないのは言うまでもありません。

 

動物の輸送

It is unacceptable to transport animals when the transport itself is likely to be harmful to their immediate or long-term health or welfare. 

輸送自体が動物の当面または長期的な健康や福祉に害を及ぼす可能性がある場合、動物を輸送することは許されない。(p55)

 

【のらぬこの解説】

動物の輸送(transport)は移動よりも広い概念です。もちろん移動に伴う輸送もありますが、保護現場からシェルターへの輸送、預かりボランティア宅への移動、外部の動物病院への通院、エンリッチメントのためにドッグランに連れて行くなど、シェルターはさまざまな理由で動物を輸送します。動物の輸送にあたっては、輸送の目的が動物の健康や福祉の向上につながることはもちろんですが、輸送そのものが動物にストレスを与えないよう配慮する必要があります。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022