動物の輸送および移動(3)  移動に伴う責任 その2

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、動物の輸送(transport)および移動(relocation)について見ています。

 

11.2 Responsibilities for relocation programs(移動に伴う責任) ※続き

 

輸送記録

A contact person must be identified at each transfer point, and a record of each animal’s travel from source to destination must be kept. 

各中継点で連絡担当者を特定し、また出発地から目的地までの各動物の輸送の記録を保持しなければならない。(p55)

 

【のらぬこの解説】

動物の輸送記録は各中継点ごとに、容易にアクセス可能な状態で保持する必要があります。

 

移動計画

Public health and safety must be considered in the design of relocation programs and protocols. 

移動計画と手順の策定においては、公衆衛生と安全を考慮しなければならない。(p55)

 

【のらぬこの解説】

特に考慮が必要なのは、人獣共通感染症や攻撃行動への対応です。

 

移動の指標

Organizations engaging in relocation should track standard metrics for transported animals.

移動に携わる組織は、輸送された動物の標準的な指標を追跡するべきである。(p55)

 

【のらぬこの解説】

動物を移動することによる健康面や精神面の変化の有無や、移動によって滞在期間が短縮できたか、また譲渡が促進されたかといった指標を全体で共有することが必要です。

 

再移動の禁止

Unless there are extenuating circumstances, animals should not be returned to the source even in the event of unexpected medical or behavioral concerns. 

酌量すべき事情がない限り、予期せぬ医学的または行動上の懸念が生じた場合でも、動物を元の場所に戻すべきではない。(p55)

 

【のらぬこの解説】

動物にとっては輸送そのものがストレス要因になります。また輸送にはそれなりの人員と費用を要します。他のアニマルシェルターに移動した動物を、譲渡できなかったからといって安直に元のシェルターに戻すようなことは避けるべきです。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022