2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、動物の輸送(transport)および移動(relocation)について見ています。
11.4.4 Monitoring and care(モニタリングとケア) ※続き
輸送時間
During transport, driving time to an intermediate or final destination should not exceed 12 hours per day, and loading and unloading of animals should not exceed 1 hour each (see Figure 11.1).
輸送中、中間地点または最終目的地までの運転時間は 1 日あたり 12 時間を超えるべきではなく、動物の積み込みと積み下ろしはそれぞれ 1 時間を超えるべきではない (図 11.1 を参照)。
Transport that exceeds 12 hours of travel must be broken up with an overnight rest stop at an intermediary location.
移動時間が 12 時間を超える場合は、途中で1泊しなければならない。(p57)
Total transport time from the source to a final destination should include no more than 28 hours confined to a transport vehicle, including loading and unloading time and excluding an overnight rest stop.
出発地から最終目的地までの総輸送時間は、輸送車両に拘束される時間を28時間以内にすべきである(積み込みと積み下ろしの時間を含み、夜間の休憩を除く)。(p57)
【のらぬこの解説】
動物の健康や福祉に与えるリスクは、輸送時間に比例して増大します。そのため「ガイドライン」には動物の輸送距離の上限は示されていませんが、動物の車両への拘束時間の総合計は28時間以内が推奨されています。もちろんリスクを最小限にするため、輸送時間は極力短くすることが望ましいといえます。なお「図11.1」を翻訳したものを載せておきます。
宿泊を伴う輸送
Dogs must be walked or exercised on trips that require an overnight stay.
宿泊が必要な旅程では、犬を散歩または運動させなければならない。(p57)
Animals should never be left unattended in a transport vehicle unless sufficient monitoring capabilities are in place, and attendants are able to immediately respond to animal care needs.
十分な監視機能があり、係員が動物のケアの必要性に即座に対応できる場合を除き、動物を輸送車両に放置するべきではない。(p57)
Cats must have access to a litter box if being housed overnight.
猫を一晩宿泊させる場合は、猫用トイレを備えなければならない。(p58)
【のらぬこの解説】
動物を12時間を超えて輸送する場合、途中で宿泊する必要があります。その際には動物を車両から降ろすことが望ましいですが、猫の場合、輸送車両の荷室が管理可能で輸送用キャリーケースが十分な大きさである場合に限り、車両に乗せたままにしておいたほうがよいかもしれません。
11.4.5 Aggregation(集約)
If transporting animals from different sources on separate vehicles is not possible, animals from each source are ideally housed in separate compartments.
異なる出発地からの動物を別々の車両で輸送することが不可能な場合、各出発地からの動物は別区画で積み込むことが望ましい。(p58)
Whenever animals from different sources are held in the same vehicle or facility, protocols that minimize exposure and cross-contamination between populations must be in place.
異なる出発地からの動物が同じ車両または施設に収容されるときはいつでも、個体群間の曝露と相互汚染を最小限に抑える手順を実施しなければならない。(p58)
【のらぬこの解説】
異なるシェルターの動物はそれぞれ別の車両で輸送することが望ましいですが、そうでない場合は別区画で収容する必要があります。
※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022