アニマルシェルターの災害対応(1)  一般事項

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターの災害対応について見ていきましょう。

 

12. Disaster response(災害対応)

 

12.1 General(一般事項)

All shelters should be prepared to respond when directly affected by a disaster. 

すべてのシェルターは、災害の直接的な影響を受けた場合に対応できるように準備すべきである。(p59)

 

Deviations from these Guidelines as the result of a disaster should be as brief and as minimal as possible. 

災害の結果としてのこれらのガイドラインからの逸脱は、できるだけ短く、最小限に抑えるべきである。(p59)

 

【のらぬこの解説】

災害対応がシェルターメディスンの重要な分野として認識され始めたきっかけは、2005年8月に米国南東部を襲ったハリケーン「カトリーナ」です。2,000人近くの死者を出した「米国史上最悪の自然災害」は、非常事態時の初動対応の重要性、そしてそのための平時対策の重要性といった教訓を残しました。災害時にはアニマルシェルターも被災する可能性がありますし、シェルターが災害対応拠点になる可能性もあります。シェルターや地域の動物の福祉を守るためには、シェルターが災害計画を策定し、初動対応が可能なように準備しておく必要があります。

「災害」といえば地震、台風、洪水といった自然災害を思い浮かべるかもしれませんが、例えば原子力発電所の事故といった人災もありますし、多頭飼育崩壊からのレスキューで急遽数十~数百頭の動物を受入れざるを得ない状況も、シェルターにとっては災害級の事象といえます。

 

一般的に、災害対応は次の 4 つの段階に分けられます。

 

Mitigation(被害抑止): 将来の災害が動物、人、シェルター、地域社会に及ぼす影響を軽減するための、平時の予防活動。

 

Preparedness(被害軽減): 特定の災害に対処するための計画を作成し、研修や演習、訓練を実施し、災害対応の準備を行う。

 

Response(応急対応): 災害計画を実施し、災害発生中に必要に応じて適用する。

 

Recovery(復旧・復興): 災害後ある程度通常に戻るまでの一定期間。この期間は数日から数年続くことがある。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022