アニマルシェルターの公衆衛生(1)  一般事項

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターの公衆衛生について見ていきましょう。

 

13. Public Health(公衆衛生)

 

13.1 General(一般事項)

Both within their facilities and in the larger community they serve, shelters must take precautions to protect the health and safety of animals, people, and the environment.

シェルターは、施設内と管轄地域全体の両方において、動物、人、環境の健康と安全を守るための予防措置を講じなければならない。(p62)

 

【のらぬこの解説】

従来「公衆衛生」は、動物や環境に起因する人間の健康被害をどう予防するかという文脈で語られてきました。しかし現在においては、人間、動物、そして環境は深くつながっていると考え(one world)、それぞれの健康は共通している(one health)ため、人間の健康だけを考えるのではなく動物や環境の健康や健全性を確保することが、結果的に人間の健康につながるという考え方が主流になっています。この概念をOne Healthと呼び、その活動をOne Health Initiativeと呼んでいます。

地域の動物を保護するアニマルシェルターは、まさに地域のOne Healthの拠点と呼ぶことができます。シェルター内の動物は、いずれシェルターの外に出ていきます。シェルター内の動物の健康を確保することは地域の動物の健康を確保することにつながり、ひいては飼い主の健康も確保することにつながります。

ここまで「ガイドライン」において、シェルター内の動物の健康と福祉を確保する方法について記述されてきました。そして最後の章ではOne Healthの観点から、シェルターにおける公衆衛生対策について述べられています。その内容のほとんどが、シェルター職員の労働安全衛生対策に割かれています。動物の健康に注力することにより職員の健康が損なわれることがあってはなりませんし、職員の健康が損なわれると動物にも影響を与えます。また公衆衛生上の問題を抱えたシェルターは地域住民の協力を得にくいですし、へたをするとシェルター自体の存続の危機も招きかねません。またシェルター職員が感染症を家族や地域住民に拡散するようなことはあってはなりません。動物保護に携わると、ともすると動物の健康や福祉にのみ目が向きがちですが、職員を含めた人間の健康も同様に重要であることを忘れてはなりません。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022