2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターの公衆衛生について見ています。
13.3 Workplace hazards(労働上の危険)
Shelters must comply with local, state, and federal health and safety regulations regarding chemical, biological, and physical hazards in the workplace.
シェルターは、職場での化学的、生物学的、および物理的な危険に関する地方、州、および連邦の健康と安全に関する規制に準拠しなければならない。(p62)
【のらぬこの解説】
アニマルシェルター職員も労働者ですから、労働災害の予防すなわち労働衛生にも留意する必要があります。このあたりについて日本の法令では主に「労働安全衛生法」で規定されています。
13.3.1 Chemical hazards(化学的危険)
有毒物質の取り扱い
When working with hazardous chemicals, PPE such as eye protection or respirator face masks must be worn as indicated by the product label.
危険な化学物質を扱う場合は、製品ラベルに示されているように、目の保護具や呼吸用マスクなどの PPE を着用しなければならない。(p62)
【のらぬこの解説】
塩素系の薬剤など有害物質を扱う際には製品説明書を順守し、PPEを着用する必要があります。シェルターで日本の法令の規制対象になるような化学物質を用いることはあまりないでしょうが、エタノールの代わりに安価なイソプロパノールを用いている場合、イソプロパノールはエタノールよりも毒性が強いため「第2種有機溶剤等」に該当し、法的規制の対象となるので注意が必要です。
排泄物等の処理
Shelters must promptly dispose of biological waste (animal waste, animal tissues, and carcasses) in a manner that follows state and local regulations.
シェルターは、州および地方の規制に従う方法で、生物学的廃棄物 (動物の排泄物、動物の組織、および死体) を迅速に処分しなければならない。(p62)
【のらぬこの解説】
排泄物や死体等の廃棄物を放置すると、アンモニアや硫化水素といった有毒ガスの発生源になる可能性があります。
規制薬物の処理
Shelters must follow regulatory guidelines for the disposal of unused medications.
シェルターは、未使用の医薬品の処分に関する規制ガイドラインに従わなければならない。(p62)
Controlled medications must be disposed of or wasted in a manner that follows regulations, prevents environmental contamination, and prevents human diversion.
規制薬物は規制に従い、環境汚染を防止し、人の転用を防止する方法で廃棄しなければならない。(p62)
禁煙
Smoking must not be allowed in animal shelters.
アニマルシェルターにおいては、喫煙すべきではない。(p62)
【のらぬこの解説】
タバコは火災の原因になるばかりでなく、動物や人間に害を与えます。
※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022