アニマルシェルターの公衆衛生(4)  労働衛生 その2

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターの公衆衛生について見ています。

 

13.3.2 Physical hazards(物理的危険)

 

けがの防止

Shelters must follow industry guidelines for the proper disposal of sharps. 

シェルターは、鋭利物を適切に処分するための業界ガイドラインに従わなければならない。(p62)

 

Since the seriousness of physical injuries may initially be difficult to recognize, supervisors must advise persons injured at the shelter or by a shelter animal to seek medical care.

身体的損傷の深刻さは最初は認識しにくい場合があるため、監督者は、シェルターで、またはシェルターの動物によって負傷した人に、医療機関への受診を助言しなければならない。(p62)

 

【のらぬこの解説】

アニマルシェルターはメスの刃や注射針など、危険なごみが発生します。一般にこういったごみはメスキュード缶(感染性廃棄物処理容器)に入れ、専門業者に処理を依頼します。

 

Noise exposure(騒音への暴露)

Both environmental and behavioral noise abatement strategies should be used in animal housing and holding areas (see Facilities, Behavior ). 

動物の飼育場所と取扱い場所においては、環境騒音と行動騒音の両方を軽減する方法を使用するべきである (施設および行動の項を参照) 。(p62)

 

Hearing protection must be worn by employees working in environments where volume is at or above 100 dB cumulatively for 15 min. 

音量が累積 100 dB 以上の環境で 15 分間作業する職員は、防音保護具を着用しなければならない。(p62)

 

When volumes exceed 85 dB at any point in time, hearing protection should be worn. 

音量が常時 85 dB を超える場合は、防音保護具を着用すべきである。(p62)

 

【のらぬこの解説】

シェルターによっては、機械の作動音や犬の鳴き声といった騒音にさらされることがあります。高レベルの騒音に長期間さらされると、「騒音性難聴」に罹患するおそれがあります。日本の厚生労働省の「騒音障害防止のためのガイドライン」ではこう規定されています。

 

85dB以上~90dB未満の場合 必要に応じて防音保護具を使用

90dB以上の場合 防音保護具を使用、見やすい場所に防音保護具の使用について掲示

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022