アニマルシェルターの公衆衛生(8)  人獣共通感染症

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターの公衆衛生について見ています。

 

13.3.3 Biological hazards(生物学的危険) ※続き

 

Other zoonotic diseases(その他の人獣共通感染症)

In addition to the general infectious disease control measures described in this document (see Medical Health), shelters should have a protocol for responding to zoonotic diseases, including communication regarding potential exposures. 

この文書に記載されている一般的な感染症対策に加えて(医療保健の項を参照)、シェルターは人獣共通感染症に対応するための手順を備えるべきである。(p63)

 

Access to animals with known zoonotic conditions should be limited to those necessary to provide appropriate care. 

人獣共通感染症の感染が確認されている動物への接触は、適切なケアを提供するために必要なものに限定するべきである。(p64)

 

Enclosures of animals with suspected zoonotic disease must be clearly marked to indicate the condition and necessary precautions, such as recommended PPE, handling, and sanitation practices. 

人獣共通感染症が疑われる動物の囲いには、推奨される PPE、取り扱い、および衛生慣行などの状態と必要な予防措置を示すために、明確にマークを付けなければならない。(p64)

 

Shelters must disclose the risk of known zoonotic disease to personnel, transport partners, foster care providers, and adopters. 

シェルターは、既知の人獣共通感染症のリスクを、職員、輸送パートナー、預かりボランティア、譲渡先に開示しなければならない。(p64)

 

【のらぬこの解説】

人獣共通感染症に罹患した動物のケアについての考え方は、その他の感染症に罹患した動物と同様です。通常の感染対策を行っていれば何も恐れることはないはずです。とはいえ、人間に感染する可能性がある病原体が存在するという緊張感は必要です。

従来、アニマルシェルターで問題になる人獣共通感染症はクラミジアやレプトスピラといった細菌性疾患、皮膚糸状菌症などの真菌性疾患や、回虫、鉤虫、疥癬などの寄生虫性疾患が中心で、ウイルス性疾患はあまり人に感染しないといわれてきました。しかし現在はSFTS(重症熱性血小板減少症候群)やCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)といったウイルス性感染症も意識しなければなりません。感染症をめぐる状況は日々変化しますので、最新の情報を入手し、正しく怖がる心構えが必要です。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022