【付録G】エンリッチメントの具体例(2)

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)の「付録G」から、アニマルシェルターにおけるエンリッチメントの具体例について見ています。

 

Auditory(聴覚)

Classical music, soft rock, reggae, nonmusical white noise, audiobooks, or (for cats) species-specific specially composed music

クラシック音楽、ソフトロック、レゲエ、音楽以外のホワイトノイズ、オーディオブック、または (猫の場合) 種の特性に合わせて作曲された音楽

<考慮事項>

Choice of sound type and volume is critical. Reducing excess noise from animal and non-animal sources may be more important than adding additional sound. Balance music preferences of animals and personnel to optimize benefits.

音の種類と音量の選択が重要である。動物や動物以外の音源からの余分な雑音を減らすことは、音を追加することよりも重要かもしれない。動物と職員の音楽の好みのバランスを取り、利益を最適化する。

 

【のらぬこの解説】

多くのアニマルシェルターは、静かではありません。さまざまな動物が収容され、またさまざまな理由で多くの人が訪れるからです。それは動物にとってストレスになりますし、職員にとってもストレスになります。心地よい音楽を流すという考え方もありますが、騒音を減らす方が効果的かもしれません。

犬や猫のエンリッチメント音楽としては、クラシック音楽や自然音のCDがよく用いられます。また鳥の声は捕食種の関心を引く可能性があります。いずれにしても同じ音を繰り返し聞いていると飽きますし、たとえ聞き飽きてうんざりしていても、聞き続けなければならないことはそれはそれでストレスにつながります。ですので、動物に音楽を聞かせる際には、必ず動物の様子を観察する必要があります。子犬や子猫を環境音に慣れさせるために、子供の声や家庭の音、交通音などを聞かせることが有効とされ、ラジオの音声を流すこともあります。

犬や猫を落ち着かせるという触れ込みの音楽は多数あり、簡単に入手可能ですが、どの程度の効果があるかはわかりません。「猫の特性に合わせて作曲された音楽」のうち有名なのは、動物行動学者チャールズ・スノードン博士の協力のもと、音楽家のデイビッド・タイ氏が作曲した楽曲で、これらが収録された“Music for Cats”というアルバムは日本でも発売されました。

 

※  Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022