アニマルシェルターに動物を入れるべきではない理由 その1

ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)の内容を一言で要約するとすれば、「動物は極力アニマルシェルターに入れない方がよい。やむを得ず入れる場合は動物福祉に十分配慮し、1日でも早く譲渡すること」となります。

「ガイドライン」はシェルターに収容された動物の人道的取り扱いの指針を示していますが、動物を無条件にシェルターで受け入れることを是とはしていません。むしろその逆です。「ガイドライン」はシェルターに動物を入れないための指針として読むこともできます。「ガイドライン」を裏読みすることで、動物をシェルターに入れないための方法について考えていきたいと思います。

 

なぜ動物をシェルターに入れてはならないのか

そもそも、なぜ動物をシェルターに入れるべきではないのでしょうか。その大きな理由は「ストレス」と「感染症のリスク」、そして「安楽殺のリスク」です。

 

1.ストレス

動物をシェルターに入れること自体が重大なストレス要因になります。「ガイドライン」にははっきりとこう書かれています。

 

Admission to a shelter is stressful for the vast majority of dogs and cats. Separation from caregivers, decreased and unfamiliar social interactions, confinement, loud noises, other stressed animals, and unpredictability all result in impaired welfare. Lack of control over one’s environment and separation from people are among the most profound stressors for companion animals. 

シェルターへの収容は、大多数の犬や猫にとってストレスである。飼い主からの別離、減少し不慣れな社会的交流、監禁、大きな騒音、他のストレスを受けた動物、および予測不能性はすべて、福祉の低下につながる。(9.2)

 

ストレスは問題行動の原因になりますし、ストレスは免疫を下げ感染症に罹患するリスクを高めます。そして結果的に、収容動物の福祉が低下します。

 

2.感染症のリスク

様々な出自や免疫状態の動物が集合するアニマルシェルターは、感染症に罹患する可能性が極めて高い場所です。そのため「ガイドライン」では、シェルターに動物を入れる前または入れる際の混合ワクチンの接種を推奨しています。また感染症に罹患するリスクが高い幼齢動物については、シェルターに入れずに預かりボランティアに託すことが推奨されています。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022