ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)は、「地域のペットケア能力」を向上させる方法についてこう述べています。
Shelters should engage with one another to leverage resources and maximize each organization’s strengths. Thoughtful partnerships avoid redundancy and increase the community’s capacity to help animals. For example, a small organization with limited medical resources can partner with a larger organization with a full-service hospital, or a brick-and-mortar organization can partner with a foster-based organization to house animals with kennel-induced stress.
シェルターは互いに協力し合い、資源を活用し、それぞれの組織の強みを最大限に発揮することが必要である。熟慮された協力関係は事業の重複を避け、地域社会による動物保護能力を向上させる。例えば、医療資源が限られている小さな団体が、フルサービスの病院を持つ大きな団体と提携したり、収容施設を持つ団体が、収容に起因するストレスを抱えた動物を保護するために預かりボランティア主体の団体と提携することができる。(2.2)
連携の効果は、業務効率化に留まりません。地域のさまざまな個人や団体が連携することにより、動物保護が特定の個人や動物保護団体の問題ではなく、地域全体の問題として認識されるという点がより重要です。その点においては、動物保護関係者だけではなく、人間の福祉関係者との連携も重要です。ペットの福祉は飼い主の福祉と密接につながっているからです(この考え方を、“One Health”になぞらえて“One Welfare”と言ったりもします)。「ガイドライン」もそこに触れています。
In addition to partnering with other animal welfare organizations, collaborating with human service professionals, such as social workers, housing advocates, and home care providers, can support pet retention and prevent relinquishment.
他の動物福祉団体と提携するだけでなく、social worker、housing advocate、home care providerなどの福祉専門家と協力することで、ペットの飼育を支援し、飼育放棄を防ぐことができる。(2.2)
“social worker”はしばしば「社会福祉士」と訳されますが、正確にはもっと広い概念で、経済的困窮者や家族の問題を抱える人などを支援する専門家全般を指します。“housing advocate”は経済的理由などにより住み家に困っている人に住居を提供する団体を指します。“home care provider”は在宅ケアを提供する事業者を指します。動物保護関係者と人間の福祉関係者の連携については、近年日本においても重要性が指摘されています。
※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022