“The Association of Shelter Veterinarians’ 2016 Veterinary Medical Care Guidelines for Spay-Neuter Programs”※(ASVによる避妊去勢プログラムにおける獣医療ガイドライン2016;以下「S/Nガイドライン」)から、犬猫の避妊去勢プログラムにおける術前の絶食について見ていきましょう。
Withholding food 絶食
Food should be withheld from all animals for an appropriate period prior to surgery; however, withholding water is neither necessary nor recommended.
手術前の適切な期間、すべての動物に食事を与えないようにすべきであるが、水を与えないことは必要でも推奨されるものでもない。(p169L)
For pediatric animals (ie, animals between 6 and 16 weeks old), a small meal should be fed 2 to 4 hours before surgery, and food should not be withheld for > 4 hours before surgery.
若齢動物(すなわち、6~16週齢の動物)の場合、手術の2~4時間前に少量の食事を与えるべきであり、手術の4時間以上前に食事を控えるべきではない。(p169L)
For juvenile and adult animals (ie, animals > 16 weeks old), food should be withheld for a minimum of 4 hours.
若い、もしくは成熟動物(すなわち、16週齢以上の動物)では、最低4時間は絶食すべきである。(p169L)
【のらぬこの解説】
犬猫の避妊去勢手術は全身麻酔で行います。そのため、麻酔中の嘔吐を防止する目的で、一定期間の絶食を行います。成熟動物の場合は術前の最低4時間は絶食すべきですが、6時間絶食する必要はありません。ただし幼齢動物の場合は低血糖予防の観点から、手術前の2時間~4時間前に軽い食事を与えます。いずれの場合においても、水を控える必要はありません。
ただしTNRを目的に捕えられた野良猫の場合、事情が少々異なります。捕獲器で野良猫を捕獲する場合、当然ですが捕獲器の中にフードを入れおびき寄せ捕獲します。通常その後猫をケージに移し替えたりはせず、そのままクリニックに運びます。捕獲後4時間絶食させることは不可能ではありませんが、捕獲器内のフードの皿を取り出すことは逸走や安全上のリスクがありますので、あえて取り出さないことが多いです。「S/Nガイドライン」にもこう書かれています。
Exceptions to minimum fasting periods may be made for feral cats in traps because of the safety risks associated with removing uneaten bait.
捕獲器にかかっている野猫については、食べ残した餌を取り除くことによる安全上のリスクを考慮して、最低絶食時間の例外を設けることがある。(p169L)
※JAVMA • Vol 249 • No. 2 • July 15, 2016 -https://avmajournals.avma.org/view/journals/javma/249/2/javma.249.2.165.xml