酸素と気道の管理

“The Association of Shelter Veterinarians’ 2016 Veterinary Medical Care Guidelines for Spay-Neuter Programs”※(ASVによる避妊去勢プログラムにおける獣医療ガイドライン2016;以下「S/Nガイドライン」)から、麻酔時の酸素と気道の管理について見ていきましょう。

 

Oxygen supplementation and ventilation strategies 酸素補給と換気方法

Oxygen flow rates for oxygen delivered through endotracheal tubes should be adequate and specific for the rebreathing or nonrebreathing circuits being used.

気管内チューブから酸素を供給する際の酸素流量は、使用する再呼吸回路または非再呼吸回路に応じた適切なものでなければならない。(p170R)

 

【のらぬこの解説】

病気や妊娠など、高リスクの動物に全身麻酔をかける際には麻酔前後に酸素吸入を行うことがあります。また吸入麻酔の際には通常、麻酔薬を酸素と混合して吸入させます。その際には適切な酸素流量が必要です。

 

Airway management 気道管理

When used, airway management devices should be properly fitted and carefully secured in place. 

使用する際には、気道管理装置(フェイスマスクや気管内チューブ)を適切に装着し、慎重に固定すべきである。(p171L)

 

When using a mask in patients with nasal congestion, care must be taken to ensure that the mouth remains open for breathing.

鼻がつまっている患者にマスクを使用する場合は、呼吸のために口が開いたままになるように注意しなければならない。(p171L)

 

The benefits of intubation must be weighed against the potential detriments for all patients undergoing spay-neuter surgery. 

挿管の利点は、避妊去勢手術を受けるすべての患者にとっての潜在的な不利益と比較して検討しなければならない。(p171L)

 

The anesthetist must verify the placement of the endotracheal tube by direct visualization or by the use of a capnograph. 

麻酔医は、気管内チューブの装着を直接目視またはカプノグラフで確認しなければならない。(p171L)

 

【のらぬこの解説】

犬や猫の全身麻酔の際に、気道確保のために気管内チューブを挿管することは、かつては「ゴールドスタンダード」とされていました。しかし近年、猫には不適切な挿管により気道を傷つけるリスクがあるため、健康な猫に30分以内の麻酔をかける際にはあえて挿管しないことも容認されるようになりました。ただし挿管が必要な緊急事態が発生した場合、すぐに挿管が行える体制を整えておくことが前提です。また短頭種、肥満、妊娠中期、重度の上気道疾患、その他麻酔時間が30分以上になることが予想される場合には挿管を検討します。いずれにしても、気道確保のメリットと挿管のリスクを比較検討する必要があります。

 

※JAVMA • Vol 249 • No. 2 • July 15, 2016 -https://avmajournals.avma.org/view/journals/javma/249/2/javma.249.2.165.xml