麻酔導入剤の投与量 その2

“The Association of Shelter Veterinarians’ 2016 Veterinary Medical Care Guidelines for Spay-Neuter Programs”※(ASVによる避妊去勢プログラムにおける獣医療ガイドライン2016;以下「S/Nガイドライン」)から、避妊去勢手術時の麻酔導入剤の投与量について見ています。

 

Accurate dosing of anesthetic agents 麻酔薬の正確な投与量 ※続き

 

投与量の設定

Concentrations of drugs used should be selected to result in appropriate volumes for patients in the program.

使用する薬剤の濃度は、プログラムに参加する患者に適した量になるよう選択すべきである。(p172R)

 

【のらぬこの解説】

薬剤の投与量は動物種などによっても異なるので、必ず製品ラベルや説明書の表示を確認すべきです。

 

投与量の調節

If commercially available drug concentrations do not accommodate accurate dosing, stock concentrations should be diluted as appropriate for individual drugs. 

市販されている薬剤の濃度では正確な投与ができない場合には、個々の薬剤に応じて在庫の濃度を適切に希釈すべきである。(p172R-173L)

 

【のらぬこの解説】

これはどういうことかというと、市販薬がものすごく濃い場合(例えば、人間用の薬剤を流用するような場合)、投与量を調節しやすいように薄めるということです。しかし薄めるのは投与直前にすべきで、薄めた薬剤を保存することは推奨されません。

 

自己調合した薬剤の取扱い

Finally, the use of compounded drugs may facilitate accurate dosing of patients; however, clinics must be in compliance with all federal, state, and local laws and regulations related to compounding.

最後に、compounded drugを使用することで、患者への正確な投与が可能になることがあるが、クリニックはcompounded drugに関連するすべての連邦、州、および地域の法律と規制を遵守しなければならない。(p173L)

 

【のらぬこの解説】

compounded drugとは、市販薬の単独使用では患者のニーズを満たすことができない場合に、市販薬や化合物を調合して「製造」された医薬品のことです。例えば日本で猫の麻酔前投与薬としてよく用いられるMMB(ミダゾラム、メデトミジン、ブトルファノールの混合液)もcompounded drugです。compounded drugを各クリニックで調合し動物に処方することは問題ありませんが、それ自身は政府機関によって承認を受けた医薬品ではありませんから、販売や譲渡などには法的規制がかかります。compounded drugの法的規制については米国、EU、日本の間においてもかなりの違いがありますので確認が必要です。

 

※JAVMA • Vol 249 • No. 2 • July 15, 2016 -https://avmajournals.avma.org/view/journals/javma/249/2/javma.249.2.165.xml