麻酔前投与薬

“The Association of Shelter Veterinarians’ 2016 Veterinary Medical Care Guidelines for Spay-Neuter Programs”※(ASVによる避妊去勢プログラムにおける獣医療ガイドライン2016;以下「S/Nガイドライン」)から、避妊去勢手術時の麻酔前投与薬について見ていきましょう。

 

Total IM anesthesia 麻酔前投与薬の包括的筋肉内注射

【のらぬこの解説】

麻酔前に投与する薬物には、前述のとおり「麻酔導入剤」「鎮痛剤」「鎮静剤」があります。それぞれを別々に注射しても構わないのですが、動物のストレスを考慮すれば、注射は一度で済ませる方が望ましいといえます。犬や猫の避妊去勢プログラムでは、一般的にそれらの薬剤を混合して筋肉内注射します。米国では「α2アドレナリン受容体作動薬」(メデトミジンなど)、「オピオイド」(ブトルファノールなど)、「解離性麻酔薬」(ケタミンなど)の組み合わせが好まれますが、日本では動物によく用いられるケタミンが麻薬扱いの規制物質のため、解離性麻酔薬の代わりに精神安定薬(ミダゾラムなど)が用いられることが多いです。

 

Anticholinergic agents 抗コリン薬

Anticholinergic agents may or may not be routinely administered as part of an anesthetic protocol. However, they should be available in all spay-neuter clinics for individual patients and emergency use. 

抗コリン薬は、麻酔手順の一部として日常的に投与されるとは限らないが、個々の患者や緊急時の使用のために、すべてのスペイクリニックで利用可能にしておくべきである。(p173L)

 

In rare cases when α2-adrenoceptor agonist–associated bradycardia results in patient compromise, reversal or partial reversal of the α2-adrenoceptor agonist should restore the heart rate.

α2-アドレナリン受容体作動薬に関連した徐脈により患者が危険な状態に陥ったまれな場合は、(抗コリン薬の投与によらず)α2-アドレナリン受容体作動薬の投与中止または部分的中止により心拍数を回復させるべきである。(p173L-p173R)

 

【のらぬこの解説】

麻酔前に「徐脈の予防」や「気管内分泌物の抑制」を目的に、抗コリン薬(アトロピンなど)を投与することがあります。また抗コリン薬は麻酔中の徐脈(脈が遅くなる)の治療に用いられるため、常用しないにしても常備すべき薬物です。

ただし、α2-アドレナリン受容体作動薬に起因する徐脈に抗コリン薬を用いると、心臓の負担を増大させるため、その場合は用いるべきではありません。

 

※JAVMA • Vol 249 • No. 2 • July 15, 2016 -https://avmajournals.avma.org/view/journals/javma/249/2/javma.249.2.165.xml