手術の手順

“The Association of Shelter Veterinarians’ 2016 Veterinary Medical Care Guidelines for Spay-Neuter Programs”※(ASVによる避妊去勢プログラムにおける獣医療ガイドライン2016;以下「S/Nガイドライン」)から、避妊去勢手術の手順について見ていきましょう。

 

Surgical procedures 手術の手順

Veterinarians or veterinary students under the direct supervision of a veterinarian must perform all surgical procedures. 

獣医師または獣医師の直接監督下にある獣医学生がすべての外科手術を行わなければならない。(p175R)

(訳注)獣医学生がどの程度手術に関わることができるかは、その国の獣医師法の規定によります。

 

General principles of gentle tissue handling, meticulous hemostasis, and aseptic technique should be applied. 

一般原則として、組織を優しく扱うこと、細心の注意を払って止血すること、そして無菌操作を適用すべきである。(p175R)

 

To reduce postoperative morbidity and improve overall outcomes, surgeons should strive to reduce surgical trauma in every way possible. 

術後の罹患率を低減し、全体的な転帰を改善するために、執刀医は可能な限り外科的外傷を低減するよう努めるべきである。(p175R)

 

Tissue handling, size and placement of sutures, and the length of the incision should all be considered. 

組織の取り扱い、縫合糸のサイズと配置、および切開の長さのすべてを考慮すべきである。(p175R)

 

Hemostasis must be ensured and verified prior to completion of procedures. 

手術が完了する前に止血を確実に行い、それを確認しなければならない。(p175R)

 

【のらぬこの解説】

ここでは、手術の方法について述べられています。とはいえ避妊去勢手術にはいくつかの術式が存在し、例えば避妊手術の切開だけでも正中切開、正中傍切開、脇腹切開、そして内視鏡手術といった方法があります。また卵巣子宮全摘出術か卵巣摘出術かといった議論もあります。そのため「S/Nガイドライン」においては、具体的な術式については言及されていません。一般的な注意事項のみが述べられています。

ただひとつ特徴的なことは「切開を極力小さくすることで術後合併症を防ぐ」とはっきりと書いている点です。本来外科手術はできるだけ大きく切開し、中をじっくりと見ながら処置するというのがあらまほしき姿です。しかしいわゆる「一斉手術」の際には、必ずしもちゃんとした手術室が使えるとは限りませんし、手術対象の動物も野良猫など術後ケアが困難な個体が多いという事情から、避妊去勢プログラムにおいては通常、最小限の切開部から「スペイフック」を用いて子宮を釣り出す術式が用いられます。

 

※JAVMA • Vol 249 • No. 2 • July 15, 2016 -https://avmajournals.avma.org/view/journals/javma/249/2/javma.249.2.165.xml