早期避妊去勢手術

“The Association of Shelter Veterinarians’ 2016 Veterinary Medical Care Guidelines for Spay-Neuter Programs”※(ASVによる避妊去勢プログラムにおける獣医療ガイドライン2016;以下「S/Nガイドライン」)から、避妊去勢手術の手順について見ています。

 

Surgical procedures 手術の手順 ※続き

 

Procedures in pediatric (6- to 16-week-old) patients 幼齢患者(6~16週齢)の処置

Neutering of pediatric animals has been endorsed by the AVMA as well as numerous other national and international veterinary and humane organizations as a means of reducing the numbers of unwanted cats and dogs. Various accepted techniques for neutering pediatric cats and dogs have been described. The specific procedure performed will vary depending on the program, the veterinarian’s preferences, and the individual patient’s needs.

「不要」とされる猫や犬の数を減らす手段として、幼齢動物の避妊去勢手術は、AVMA(米国獣医師会)をはじめ、国内外の数多くの獣医師団体や人道団体に支持されている。幼齢の犬猫の避妊去勢手術については、さまざまな手法が認められている。具体的にどのような処置を行うかは、プログラム、獣医師の好み、個々の患者のニーズに応じて異なる。(p176L)

 

【のらぬこの解説】

かつて犬猫の避妊去勢手術は生後半年以降、つまり性成熟を待ってから実施する方がよいとされていて、そのように教育を受けた多くの獣医師がこの考え方を支持しています。しかし性成熟を迎えた犬や猫は、油断していると予期せぬ繁殖のリスクがあります。予期せず生まれてしまった動物たちが「不要」とされ、遺棄されたりアニマルシェルターに持ち込まれたりします。そのうちペットとして家庭に入ることができる動物は一握りで、多くは過酷な野外生活で衰弱死したり、事故や虐待により凄惨な死を迎えたり、または殺処分という運命を迎えます。ですので、性成熟前に確実に避妊去勢手術を実施する必要があります。

外に出さなければ少々手術が遅れても大丈夫とお思いかもしれませんが、飼い主の過失により逸走してしまう可能性はゼロではありませんし、災害により自宅が被災し、ペットとはぐれてしまうこともあり得ます。そういった動物が繁殖して、その子孫が野良犬や野良猫となり、それらがさらに繁殖してしまうという悪循環が生じます。

そのためペットの猫の場合、米国では5か月齢まで、英国では4か月齢までのいわゆる「性成熟前避妊去勢手術」が推奨されていて、犬もそれに準じる(超大型犬を除く)とされています。さらにアニマルシェルター等の譲渡対象動物の場合、避妊去勢手術の完全履行を担保するため、手術可能な週齢(6週齢以降)であれば譲渡前に避妊去勢手術を実施します。これがいわゆる「早期避妊去勢手術」です。

 

※JAVMA • Vol 249 • No. 2 • July 15, 2016 -https://avmajournals.avma.org/view/journals/javma/249/2/javma.249.2.165.xml