作業手順書とチェックリスト

“The Association of Shelter Veterinarians’ 2016 Veterinary Medical Care Guidelines for Spay-Neuter Programs”※(ASVによる避妊去勢プログラムにおける獣医療ガイドライン2016;以下「S/Nガイドライン」)から、作業手順書について見ていきましょう。

 

Use of standard operating procedures and checklists 標準作業手順書とチェックリストの使用

Standard operating procedures should reflect current practice guidelines and be flexible enough to meet the unique needs of individual patients. 

標準作業手順書は、最新の診療ガイドラインを反映し、個々の患者のニーズに対応できるように柔軟であるべきである。(p180L)

 

Unnecessary deviations from standard operating procedures introduce greater opportunities for errors or omissions and should be avoided. 

標準作業手順からの不必要な逸脱は、エラーや漏れの機会を増やすことになるため、避けるべきである。(p180L)

 

【のらぬこの解説】

「標準作業手順書」と言うと仰々しいですが、簡単に言えば「作業マニュアル」です。手順書の作成は前述の「プロセス中心管理」の第一段階としての意味もありますが、「作業の平準化」という役割もあります。決まったメンバーで定例的に実施される一般の動物病院の手術とは異なり、特にHQHVSNと呼ばれるいわゆる「一斉手術」においては、毎回同じスタッフで実施されるとは限りません。執刀する獣医師ですら交代することがあります。そんな中、その日に担当したスタッフの習熟度によって処置が異なり、提供される獣医療の質が変動することは好ましくありません。そのため、10年選手のベテランであっても、新入りのスタッフであっても、手順書を読んでおけば同じ手順で作業ができるようにしておくべきなのです。

手順書は提供される獣医療の質を保証するものですから、その策定に際しては十分に検討を行うべきです。「S/Nガイドライン」をベースにして、各プログラムの事情に合わせてカスタマイズすればよいですが、特に一斉手術には様々な出自の、また様々な状態の動物が来ますので、ガチガチのマニュアルではなく、柔軟性も必要です。時には手順書から逸脱する場合もあるでしょうが、その際には逸脱内容について記録しておく必要があります。手順書からの逸脱が頻発するようであれば、手順書そのものを見直す必要があるかもしれません。

作業が手順書通りに実施されたことを確認するためにチェックリストが用いられますが、これは医療記録と兼用できます。つまり医療記録カードに実行すべきタスクをあらかじめ印刷しておき、実行した事項についてチェックを入れるようにしておけばよいのです。現場での負担を極力減らすため、チェックリストはできるだけ簡素化したほうがよいでしょう。

 

※JAVMA • Vol 249 • No. 2 • July 15, 2016 -https://avmajournals.avma.org/view/journals/javma/249/2/javma.249.2.165.xml