スタッフの労働安全

“The Association of Shelter Veterinarians’ 2016 Veterinary Medical Care Guidelines for Spay-Neuter Programs”※(ASVによる避妊去勢プログラムにおける獣医療ガイドライン2016;以下「S/Nガイドライン」)から、スタッフの労働安全について見ていきましょう。

 

Personnel health and safety 職員の健康と安全

 

快適な労働環境の提供

High-quality, high-volume spay-neuter programs should foster a safe and healthy work environment for program personnel. 

高品質、大量の避妊去勢プログラムは、プログラム担当者にとって安全で健康的な職場環境を醸成すべきである。(p180R)

 

【のらぬこの解説】

HQHVSN、いわゆる「一斉手術」の際にはさまざまな動物が一堂に会します。その中にはTNR対象の野良猫も含まれます。また注射針やメスなどの危険物も取り扱います。注意散漫による一瞬の気のゆるみが動物やスタッフを危険にさらすこともあります。気が散らない静かな環境で手術を行うことが理想ですが、少なくとも大音量の音楽、大声での会話、不必要な人の往来、犬の吠え声、ケージのドアの開閉音、携帯電話などに注意が必要です。

 

労働災害の防止

As with any type of veterinary practice, spay-neuter programs should take the necessary precautions to ensure chemical and biological safety, management of waste anesthetic gas exposure, and safe disposal of sharp instruments and to minimize the risk of occupational noise exposure, zoonotic disease transmission, physical injuries, compassion fatigue, and other work-related health problems. 

他の種類の獣医療業務と同様に、避妊去勢プログラムは、化学的および生物学的安全性、麻酔ガスの廃棄物暴露の管理、鋭利な器具の安全な廃棄を確保し、職業上の騒音暴露、人獣共通感染症の感染、身体的傷害、共感疲労、およびその他の仕事に関連した健康問題のリスクを最小限に抑えるために、必要な予防措置を講じるべきである。(p180R)

 

Whenever possible, lift tables, stretchers, or blankets should be used to facilitate movement of conscious and anesthetized patients. 

可能な限り、意識のある患者や麻酔をかけた患者の移動を容易にするために、リフトテーブル、ストレッチャー、またはブランケットを使用すべきである。(p180R)

 

【のらぬこの解説】

犬や猫の避妊去勢プログラムにおいて、もっとも危険な作業はやはり動物の取扱いです。動物による咬傷もさることながら、大型犬を持ち上げる際に腰を痛めたり、動物を運ぶ際に滑って転びけがをしたりすることもあります。適切な器具の使用や拘束技術は、動物にかかるストレスを軽減するだけではなく、スタッフの労働災害も軽減します。

 

※JAVMA • Vol 249 • No. 2 • July 15, 2016 -https://avmajournals.avma.org/view/journals/javma/249/2/javma.249.2.165.xml