スタッフのメンタルヘルス対策

“The Association of Shelter Veterinarians’ 2016 Veterinary Medical Care Guidelines for Spay-Neuter Programs”※(ASVによる避妊去勢プログラムにおける獣医療ガイドライン2016;以下「S/Nガイドライン」)から、スタッフのメンタルヘルス対策について見ていきましょう。

 

Personnel health and safety 職員の健康と安全 ※続き

 

スタッフのメンタルヘルス対策

Workplaces should also strive to create a safe, supportive environment in which mental health issues are not stigmatized. 

職場はまた、メンタルヘルス問題が汚名を着せられない、安全で協力的な環境づくりに努めるべきである。(p181L)

 

【のらぬこの解説】

「S/Nガイドライン」によると、アニマルシェルターで従事する獣医師は、他業種の獣医師よりもうつ病を発症するリスクが高いとされています。またいわゆるスペイクリニックで従事する獣医師は、うつ病、燃え尽き症候群、共感疲労、自殺企図のリスクが高いといわれています。また獣医師以外のスタッフも、同様のリスクを抱えています。「S/Nガイドライン」にはその原因について述べられていませんが、ひとつの要因として「患者の死に直面する機会が比較的多い」ことがあるのではないかと私は考えています。避妊去勢プログラムにおける患者の死亡率は、一般の動物病院の手術におけるそれと大差ないといわれています。しかし手術の実施数が桁違いですので、死亡例に直面する絶対数も増えるのです。また妊娠中のメスの避妊手術(いわゆる堕胎)は、心情的に気持ちの良いものではありません。もちろんそれに限らず、避妊去勢プログラムには、大事に飼われているペットを対象にする一般の動物病院とは異なる気苦労がつきものです。

そのことを念頭に、避妊去勢プログラムの実施者はスタッフのメンタルヘルス対策を講じる必要があります。具体的には、精神的不調を感じた際の相談先を控室に掲示する、容易に受診できるよう勤務体制に柔軟性を持たせる等の対策により、メンタルヘルスケアへのアクセス機会を増やすことが考えられます。

 

セルフケア

Workers may be trained to recognize early signs of stress, compassion fatigue, and depression in themselves and others, and programs should provide a supportive atmosphere and referral to mental health services.

労働者は、自分自身や他者のストレス、共感疲労、うつ病の初期兆候を認識するよう訓練され、プログラムは、支援的な雰囲気とメンタルヘルスサービスへの紹介を提供すべきである。(p181L)

 

【のらぬこの解説】

メンタルヘルス対策は管理監督者による「ラインケア」もさながら、ストレスに自ら気づき自己管理する「セルフケア」も重要です。管理監督者は、スタッフがセルフケアについて学ぶためのリソースを提供するなどの支援を実施する必要があります。

 

※JAVMA • Vol 249 • No. 2 • July 15, 2016 -https://avmajournals.avma.org/view/journals/javma/249/2/javma.249.2.165.xml