法令順守

“The Association of Shelter Veterinarians’ 2016 Veterinary Medical Care Guidelines for Spay-Neuter Programs”※(ASVによる避妊去勢プログラムにおける獣医療ガイドライン2016;以下「S/Nガイドライン」)から、避妊去勢プログラムの法的規制について見ていきましょう。

 

Regulatory and legal considerations 規制および法律に関する考察

Veterinarians and administrators should consult local zoning and environmental regulations, state veterinary practice acts, and state boards of veterinary medicine, pharmacy, and public health for specific requirements in their respective jurisdictions. 

獣医師と管理者は、それぞれの管轄区域における特定の要件について、地域の建築規制や環境規制、州の獣医師法、州の獣医事・薬事・公衆衛生委員会に相談すべきである。(p181R)

 

【のらぬこの解説】

「S/Nガイドライン」の最後は法令遵守の話です。このガイドラインは動物の避妊去勢プログラムにおける獣医療の最低基準について述べられていますが、もしそこに関わる法的規制があるならば、当然ながらそれが優先されます。

米国も日本も法治国家ですから、何かを始める際には法律の定めに従わなければなりません。動物の避妊去勢プログラムを実施しようとした場合、獣医療法に基づく飼育動物診療施設の届出が必要になるのはもちろんですが、それだけに限りません。獣医師や愛玩動物看護士でなければできない医療行為もありますし、麻酔にケタミンを用いる際には麻薬施用者免許が必要です。もっと言えば、クリニックを建設しようとした場合には土地利用や建築などに関する規制を遵守しなければなりませんし、スタッフを雇用するのであれば社会保険に関する手続きも必要です。個人事業として実施するのであれば税務署に事業開始届を提出する必要があるかもしれませんし、何らかの法人で運営するのであればその法人を所管する法律の定めに従わなければなりません。これ以上詳しく触れませんが、何かを始めようとすれば、さまざまな法的規制にぶち当たるということは頭に入れておいたほうがよいでしょう。

避妊去勢プログラムに限らず、動物保護活動のような事業を行う場合には、特に法令順守に気を遣う必要があると私は考えています。法令違反が公になればそれは即信用失墜につながり、寄付やボランティアの募集に悪影響を与えます。また仮にその活動を妨害しようとする人たちがいたとすれば、揚げ足を取るために必ず法的不備を突いてくるからです。当然ですが、公的援助を受けようとする場合、法令遵守は前提となります。

 

※JAVMA • Vol 249 • No. 2 • July 15, 2016 -https://avmajournals.avma.org/view/journals/javma/249/2/javma.249.2.165.xml