シン・シェルターメディスン超入門 (1)アニマルシェルターと安楽殺

私のブログは「犬猫の殺処分」をテーマにしています。少なくとも私はそのつもりでいます。しかし実際の内容は避妊去勢手術やTNR、迷子の動物の保護といった、一見殺処分とは関係なさそうに見えるテーマを多く取り扱っています。しかしこれらは殺処分と密接に関わっている問題で、感情論ではなく戦略的に殺処分をなくしていくためには、どうしても避けては通れません。そこでこれらの事項がどのように殺処分と関わっているのか、そして戦略的に殺処分をなくしていくにはどうすればよいかということについて考えていきたいと思います。そのためにはシェルターメディスンについての基本的な理解が必要です。

 

シェルターメディスンとは何か

シェルターメディスンとは、20世紀末に米国で誕生した獣医療の一分野です。シェルターメディスンを端的に表現すると「アニマルシェルターに収容されている動物の福祉を担保するための獣医療」ということになります。そのためには

・快適な収容環境

・適切な衛生管理による感染症の予防

・エンリッチメントの提供などのストレス対策

・動物種の特性に合わせた日常的なケア

などが必要となります。

 

アニマルシェルターにおける安楽殺問題

アニマルシェルターに収容された動物の福祉を担保するためには、それなりの設備と人員が必要です。能力を超えた頭数の動物を受け入れてしまうと、アニマルシェルターが多頭飼育崩壊状態に陥り、収容動物の福祉が担保されません。そこで収容動物の数を適正化する目的で、一部の動物が安楽殺されるわけです。主に身体的障害や行動上の問題などによって譲渡が難しく長期滞在が予想される動物が対象になりますが、それでも過密状態が解消されない場合は単純に譲渡のしやすさで判断されます。場合によっては安楽殺の口実を得るための目的で、猫にFIVやFeLVの検査を実施したりもします。

シェルターメディスンという獣医療が生まれた問題意識の一つとして、こういった「アニマルシェルターにおける安楽殺問題」がありました。20世紀末の米国においては、ロードキル(交通事故)によって命を落とす猫よりも多くの頭数の猫が、アニマルシェルターで安楽殺されていました。そこもどうにかしたかったというわけです。

 

シェルターメディスンの定義・再び

そこも踏まえた上でシェルターメディスンを再定義してみると、「安直な安楽殺に頼ることなく、アニマルシェルターに収容されている動物の福祉を担保するための獣医療」と表現することができます。その方法は単純です。アニマルシェルターに入る動物の数を減らしつつ、収容動物を速やかにシェルターから出せばよいのです。それはどういうことか、次回から見ていくことにしましょう。