シン・シェルターメディスン超入門(4)シェルターから動物を早く出す

前回シェルターメディスンは「アニマルシェルターに動物を入れないための獣医療」であると述べました。それはシェルターの過密状態を防ぐことはもちろんですが、動物をシェルターに入れること自体にリスクがあるからです。しかしやむを得ずシェルターに動物を入れなければならないことも当然起こり得ます。その際には収容動物の福祉を担保しながらできるだけ早くシェルターから出す方策を探さなければなりません。収容動物のリスクは収容期間に比例して増大するからです。もちろん動物の滞在期間を短くすることができれば、結果的にシェルターに滞在する動物の数を減らすことにもつながります。つまりシェルターメディスンは「収容動物の福祉を担保しながら、できるだけ早くシェルターから出すための獣医療」という側面も持ちます。これもシェルターメディスンの重要な概念ですから、よく理解しておいてください。

とはいえ、野良動物や負傷動物など身体的・行動的ケアが必要な動物に関しては一定期間の滞在が必要な場合もあります。そのため、収容のリスクを低減するため速やかにシェルターから出していく動物と、シェルターでじっくりケアしていく動物を峻別して管理していく必要があります。シェルターメディスンでは「ファストトラック(高速路)」と「スロートラック(低速路)」という概念をよく用います。両者は管理の方向性が若干異なります。

 

ファストトラック

シェルター収容のリスクを最小限に抑えるため、できるだけ早くシェルターから出していこうとする動物群の経路です。比較的譲渡しやすい元ペットや子犬・子猫などがここに含まれます。ここで目指すのは、できるだけ早い譲渡です。動物の健康状態に問題がなければ、感染症予防に細心の注意を払いながらワクチン接種や駆虫、避妊去勢手術など譲渡に向けたケアを計画的に実施していきます。そして並行して動物の情報を公開し、譲渡先を募ります。思うように譲渡が進まず、数週間滞在するようであれば、その動物はスロートラックに割り当てられます。

 

スロートラック

何らかの身体的・行動的ケアが必要であったり、老齢等で譲渡が難しい動物がここに割り当てられます。ここでは長期滞在を前提に、居住環境やエンリッチメントに重きを置きます。また他の施設の方がより良いケアが受けられる、または譲渡先のあてがあると判断された場合は移送も検討されますが、それは通算滞在期間の短縮につながるか否かで判断します。

 

シェルターをファストトラック用とスロートラック用に物理的に分離できればそれに越したことはありませんが、多くのシェルターにそのような余裕はないでしょう。「早く出すことができる子はできるだけ早く出す」という意識づけがまず大事です。