シン・シェルターメディスン超入門(9)シェルターに動物を入れない方法

ここまで、アニマルシェルターへの動物の出入りについて見てきましたが、ここからは、いかにアニマルシェルターに動物を入れないかということについて考えてみたいと思います。

「動物福祉の観点から、極力シェルターに動物を入れないほうがよい」とはいいますが、どうすればそれが実現できるか、シェルターの対場から考えると以下の方策が考えられます。

 

犬猫の避妊去勢手術の普及

シェルターに入る動物の数を減らすための方策の「一丁目一番地」といえるのが、犬や猫の避妊去勢手術の普及です。ペットの過剰繁殖を防止し、「不要」とされシェルターに持ち込まれる動物の絶対数を減らすことが、シェルターに入る動物の数を減らすための王道です。

 

ペットの「保持」(retention)

安易な「引取り拒否」によらず、ペットを手放そうとする飼い主に終生飼養してもらう、もしくは次の飼い主が見つかるまでの間だけでも飼養してもらうといった取り組みを “retention”(保持)といいます。そのためには飼い主がペットを飼養し続けるためのサポートが必要です。

 

譲渡支援

飼い主がどうしてもペットを飼い続けられない場合、シェルターを介さずに新しい飼い主を見つけるための支援を行います。

 

飼い主教育

飼い主がペットを飼養し続けるためには、正しい知識を身に着けることが不可欠です。そのためシェルターが飼い主教育を行うことは理にかなっています。その他ペットの飼い方相談や健康相談、行動相談なども実施するとよいでしょう。

 

迷子ペットの速やかな返還

迷子のペットをシェルターに入れることなく飼い主に返還するためには、ペットの個体識別措置が不可欠です。しかもスキャンできる場所が限られるマイクロチップだけではなく、誰もが飼い主にアクセスできるような迷子札も必要です。また災害時には迷子のペットが増えることが想定されますので、それを防ぐ方策も必要です。

 

シェルター事業としてのTNR

シェルターが地域のTNR (Trap-Neuter-Return)活動を支援することにより、野良猫の個体数を減少させることも有効です。

 

預かりボランティアの活用

どうしてもシェルターが動物を引取らざるを得ない場合、個人ボランティアに預けるという選択肢もあります。米国においては、抵抗力が弱い子猫はシェルターに入れずに、ボランティアに託すことが一般的です。