飼い主が自らのペットをアニマルシェルターに連れていき、引取りを求めた場合、シェルターは何ができるでしょうか。これまでにしつこく述べているとおり、動物は極力シェルターに入れないほうがよいですから、その観点で対策を考える必要があります。
この場合、最も望ましい展開は「飼い主が飼養し続ける」ことですが、どうしてもそれが困難であれば「シェルターを経由することなく新しい飼い主に譲渡する」ことがベターであるといえます。このように、ペットを手放そうとする飼い主に終生飼養してもらう、もしくは次の飼い主が見つかるまでの間だけでも飼養してもらうといった取り組みが必要になります。それはASV(シェルター獣医師会)のガイドラインでは“retention”(保持)と呼ばれています。では、「保持」はどう進めていけばよいのでしょうか。
飼い主が飼養し続けるためのサポート
もし飼い主がペットを手放そうとする理由が何らかのサポートにより解消するのであれば、そのサポートを行うのが最も穏便な方法です。サポートはシェルターが直接、もしくは他の団体や行政機関につなぐことが考えられます。例えば「ペットの飼い方がわからない」とか「繁殖して困る」といった理由であればシェルターで対応可能でしょうし、「お金がない」とか「世話が体力的にきつい」というのであれば、行政機関(福祉部門)につなぐという手もあります。「鳴き声で近所から苦情が出ている」というのであれば、専門家につなぐべきでしょう(特に地方では、行動治療に対応する動物病院が少ないので苦労しますが)。
譲渡先を探すためのサポート
サポートによってもペットの飼養が困難な場合は、飼い主自らの責任で新しい飼い主を見つけてもらう必要があります。厳しい言い方ですが、飼い主の都合でペットを手放そうとするのですから、それくらいの努力はすべきです。とはいえ、いきなりそう言われてもどうすればよいかわからない飼い主が多いでしょうから、譲渡先を探すためのサポートは必要です。新しい飼い主を探すためのWEBサイトもいくつかありますし、シェルター自身が譲渡先募集の情報を発信するといった取り組みも必要です。
どうしても保持が難しければ
飼い主の急死や急な転勤など譲渡先を探す時間がない場合や、飼い主にその適性がないことが明らかな場合は、動物を引取らざるを得ません。こういったケースで杓子定規に引取りを拒否してしまうと、新たな遺棄・虐待事案が生まれかねません。
「引取り拒否」との違い
このように「保持」はシェルターに動物を入れないための取り組みではありますが、あくまでも動物の幸せを第一に考えている点において、いわゆる「引取り拒否」とは根本的に異なります。