迷子のペットをスムーズに飼い主に返還するためには、飼い主が誰かということがわかるような措置をあらかじめペットに施しておく必要があります。ペットの識別措置として、具体的にどのような措置を行えばよいか、日本の環境省が示しているガイドライン「動物が自己の所有に係るものであることを明らかにするための措置について(平成18年環境省告示第23号)」にはこう書かれています。
所有者の氏名及び電話番号等の連絡先を記した首輪、名札等又は所有情報を特定できる記号が付されたマイクロチップ、入れ墨、脚環等によること。なお、首輪、名札等経時的変化等により脱落し、又は消失するおそれの高い識別器具等を装着し、又は施術する場合にあっては、可能な限り、マイクロチップ、脚環等の非常災害時においても脱落のおそれが低く、より耐久性の高い識別器具等を併用して装着すること。
やはり迷子札も必要
この記述は「マイクロチップを装着していれば迷子札は不要」と読めます。しかしシェルターメディスンの基本である「アニマルシェルターに動物を入れない」ことを考えると、たとえマイクロチップを装着していても迷子札は必要です。迷子のペットを保護した人が、全員マイクロチップリーダーを持っているとは限らない(普通の人は持ってないでしょう)からです。ペットに迷子札が付いていれば、シェルターを介することなく、保護した人が直接飼い主に返還できます(迷子札が付いていない場合、動物管理機関や動物病院などでマイクロチップをスキャンしてもらうことは可能です)。迷子札は「経時的変化等により脱落し、又は消失するおそれ」がありますから、定期的なメンテナンスや交換が必要です。
マイクロチップの注意点
それでも迷子札は脱落してしまう可能性がゼロではありませんから、マイクロチップと併用すると安心です。しかしマイクロチップをリーダーで読み取っても、15桁の数字が表示されるだけということに注意する必要があります。その数字をもとに所有者を検索することになりますが、個人情報を含むため、そのシステムにアクセスするパスワードの配布先は行政機関や動物病院などに限られています。またそもそも飼い主がシステムに情報を登録していなければ、何の役にも立ちません。
またマイクロチップは通常「正中線よりやや左側の背側頚部」に装着され、スキャンする際にはそこを中心に行いますが、まれにマイクロチップが皮下を移動してしまい、思わぬ場所に存在することもあります。それを考えると動物管理機関には、一般的に普及しているハンディ型リーダーだけではなく、全身スキャンが可能なボックス型リーダーを備えることが望ましいですが、高価で大型のためあまり普及していません。そのため、ペットの定期的な健康診断の際に動物病院でマイクロチップをスキャンしてもらい、マイクロチップが一般的な位置にあるか、また脱落していないかをチェックしておくと安心です。災害や逸走など「もしも」の事態はいつやってくるかわかりませんから、日常の備えが重要です。