災害対応についても、シェルターメディスンの一分野として位置づけられます。アニマルシェルターは災害時の動物関連の対応について一定の役割を期待されますし、アニマルシェルター自体が被災する可能性もあるからです。しかしここでは「アニマルシェルターに動物を入れない」という観点で、ペットの災害対策について考えてみたいと思います。
ペットとの同行避難
日本の環境省がペットの災害対策として推奨しているのが「同行避難」です。「同行避難」とは、飼い主がペットと一緒に避難する避難行動のことです。そのことにより、迷子のペットを減らすことができます。環境省は同行避難の意義をこう述べています。
過去の災害においては、ペットが飼い主と離れ離れになってしまう事例が多数発生したが、このような動物を保護するには多大な労力と時間を要するだけではなく、その間にペットが負傷し、衰弱・死亡するおそれもある。また、不妊去勢処置がされていない場合、繁殖による頭数の増加で、住民の安全や公衆衛生上の環境が悪化することも懸念される。このような事態を防ぐために行う同行避難は、動物愛護の観点のみならず、放浪動物による人への危害防止や生活環境保全の観点からも、必要な措置である。
なお、同行避難とは、避難行動を示す言葉であり、指定避難所でペットを人間と同室で飼養管理することを意味するものではない。
(『人とペットの災害対策ガイドライン』P45)
同行避難に向けた平時対策
「同行避難」と簡単に言いますが、実際に行動するには知識や訓練が必要です。また同行避難を想定したクレートトレーニングなどのしつけや、必要な物資の準備なども必要です。シェルターができることとしては、飼い主教育や、可能であれば自治体や獣医師会などとの共催で実地訓練を行うといったことが考えられます。
個体識別措置
とはいえ、自らの生命を守るため自宅にペットを残して避難したり、避難中にペットとはぐれてしまうといったこともあり得ます。そういった意味でも、ペットにマイクロチップや迷子札などの個体識別措置を施しておくと飼い主のもとに戻りやすくなりますから、放浪動物化を防ぐことができます。
避妊去勢手術の実施
そして、ペットの避妊去勢手術は災害対策としても有効です。繁殖行動に起因する行動の多くは、避難所において「迷惑行動」になりかねません。また迷子になったペットが野外で繁殖してしまうと、飼い主がいない動物が増えてしまうことになります。それらはすなわち、シェルターに入る動物を増やしてしまうことになります。