アニマルシェルターには、飼い主が飼いきれなくなったペットのほかにも、「迷子」の動物がやって来ます。その中には迷子になったペットも含まれますが、飼い主がいない、いわゆる野良犬や野良猫も含まれます。シェルターに入る動物の数を減らすためには、野良犬や野良猫がシェルターに入るのを防ぐことも考えなければなりません。その方策の一つとして、Trap-Neuter-Return(TNR)が考えられます。
TNRとは
このブログを読んでおられる方には説明不要かもしれませんが、TNRとは野良猫を捕獲(Trap)し、避妊去勢手術(Neuter)を施したのちに元の場所に戻す(Return)活動のことです。米国ではリターンの前に狂犬病ワクチンを接種するので、それをアピールするためにTrap-Neuter-Vaccine-Return(TNVR)と呼ぶこともあります。TNRは野良猫の繁殖を抑制し、その個体数を人道的に減らしていくための活動ですが、繁殖行動に起因する野良猫の問題行動を減らすことによる、生活環境保全活動の側面も持ちます。
日本では法的に難しいですが、国や地域によっては野良犬のTNRも行われています。犬の場合は必ずしも箱罠で捕獲されるわけではないので、Catch-Neuter-Return(CNR)と呼ぶこともあります(箱罠以外の捕獲方法は必ずしも「人道的」とは言い難いので、それはそれでどうかとは思いますが)。
なお、シェルターに収容された野良猫に避妊去勢手術を施し元の場所に戻す、いわゆるShelter-Neuter-Return(SNR)という事業もありますが、これはシェルターから動物を生きて出すための方策のひとつですので、後で改めて説明することにします。
シェルター事業としてのTNR
TNRそのものはアニマルシェルターとは直接関係ない活動ですが、シェルター事業としてTNRを実施したり、シェルターがTNR活動を支援することは、シェルターに入る動物を減らすという点において理にかなっています。その理由は次のとおりです。
・将来的に、野良猫の個体数減少が期待できる
・TNR済みの野良猫は耳カットでそれとわかるため、シェルターに持ち込まれない
その他、動物の苦情対応も行うようなシェルターにおいては、野良猫の問題行動による苦情が減るというメリットもあります。
シェルターのTNR支援
シェルターが地域のTNR活動にどこまで関わるかについては、地域の事情やシェルターのリソースなどにより異なりますが、次のような関わり方が考えられます。
・シェルター事業としてTNRを実施する
・シェルター内のクリニックを、避妊去勢手術のために提供する
・TNR活動にシェルター職員を派遣する
・捕獲器を貸し出す
・地域のTNR活動の立ち上げを支援する
・野良猫の「世話人」を養成する
・TNR活動の広報に協力する