シン・シェルターメディスン超入門(24)譲渡についての基本的な考え方

アニマルシェルターが保護動物を新しい飼い主に譲り渡すことを、日本ではざっくりと「譲渡」と呼んでいますが、前回述べたとおり、それは必ずしも所有権の移転を伴うAdaption(養子縁組)とは限りません。ですので、日本の「譲渡」と米国の“Adaption”は厳密には違うのですが、このブログでは特に断らない限り、同等のものとして取り扱います。

 

譲渡の歴史

米国において、動物の保護活動や譲渡といった組織的活動は19世紀末から行われていましたが、20世紀半ばまでは譲渡に関するルールは確立されておらず、多くの場合手続きなしで譲渡されていました。しかしそれは時に不適切な譲渡を招くということで、1970年代には譲渡に際して契約や面接を行うことが一般的になりました。これはしばしば“Policy-Based Adaption”(契約譲渡)と揶揄されるのですが、とにかく手続きが煩雑で厳密な身元調査を伴うので、それがかえって譲渡を妨げるという批判もありました。20世紀末に、動物福祉の専門家が地元のシェルターから動物の譲渡を断られるという「事件」が立て続けに起こり、身元調査により合格や不合格を決めるという譲渡のありかたが見直されるようになりました。もちろん「誰でもOK」というわけにはいきませんが、「厳格ではないが妥当な最低基準」に合致することを前提に、シェルターが「マッチング」によりその動物の飼い主としてふさわしいと判断した人に譲渡する“Open Adaption”という考え方が生まれました。

 

「譲渡適性」という考え方

「契約譲渡」の考え方を簡単に言うと「ちゃんとした動物を、間違いのない人物に譲渡する」ということです。そのためには、誰に譲渡しても問題が起こらないような動物を選別する必要があります。その指標が「譲渡適性」です。譲渡適性を評価する際には身体的な健康状態や、行動様式が家庭動物としてふさわしいかどうかなどを見ていきます。その結果、家庭動物としてふさわしいと評価された動物だけが選抜され、譲渡対象となるわけです。この方法はたしかに譲渡後のトラブル防止という点においては非常に有効ですが、譲渡の門戸を狭めてしまうという欠点もあります。

 

「マッチング」という考え方

対して、“Open Adaption”の考え方は「その動物の飼い主としてふさわしい人に譲渡する」ということで、それを判断するために「マッチング」を行います。マッチングとは収容の過程で収集された動物の健康状態や行動状態などの情報をもとに、譲り受け希望者のスキルや生活様式などと照らし合わせて「飼い主としてふさわしいか」どうかを評価していく作業です。このことにより、例えば以前であれば「譲渡適性なし」と評価されたような動物でも、ケアのスキルを持つ人であれば譲渡することができます。

かつて動物保護団体や研究者によって、犬や猫の行動評価のためのツールがいくつか開発され、譲渡適性を判断する拠り所とされてきましたが、現在ではそれらのツールはマッチングのための情報収集などに用いられます。

なお、たとえ綿密なマッチングを行ったとしても、ミスマッチが生じる可能性はゼロではありませんから、譲渡後のフォローアップは必須です。