シン・シェルターメディスン超入門(29)RTFって何?

アニマルシェルターから動物を「生きて」出す方法として「返還」「譲渡」そして「移送」について述べてきましたが、米国で一般的になりつつあるのが“Return-to-Field”(RTF)です。日本ではなじみがないこの手法について、簡単に説明いたしましょう。

 

RTFとは?

RTFとは、シェルターに収容された野良猫に避妊去勢手術を施し、元の場所に戻すことを指します。正確に言えば“Shelter-Neuter-Return(SNR)”です。また“Feral Freedom”というプロジェクト名の方が通りがよいかもしれません。

 

TNRとどう違うの?

RTFは、やっていることそのものはTNR(Trap-Neuter-Return)と同じです。しかしいくつか違いがあります。

 

目的の違い:TNRは野良猫の個体数管理を通じてシェルターに入る猫の数を減らそうとする活動ですが、RTFは猫をシェルターから「生きて」出すためのシェルター事業です。

 

実施主体の違い:TNRの実施主体は、シェルターや動物保護団体、民間ボランティアや地縁団体など様々ですが、RTFの実施主体はあくまでもシェルターです。

 

猫の流れの違い:TNRの場合、捕獲された野良猫はクリニックに搬送され、避妊去勢手術ののちに元の場所に戻されます。RTFの場合、猫はいったんシェルターに収容されます。ただしシェルター内のクリニックで避妊去勢手術を行うTNRの場合、形式上猫がいったんシェルターに入ることになります。

 

RTFの注意点

TNRの場合、野良猫のコロニーの世話をしている人(caregiver:本ブログでは「世話人」と訳します)がいて、リターン後の猫の世話は引き続きその世話人が行うことが多いですが、RTFの場合、リターンした猫に必ずしも世話人がいるとは限りません。またリターンした場所が日常的にTNRが実施されているような場所でなければ、いきなり耳カットされた猫が出現して地域住民が戸惑うということも考えられますので、少なくともリターン地点周辺の民家にはその旨を周知しておく必要があります(米国ではドアハンガー式のチラシがよく用いられる)。

 

日本でRTFは可能?

日本の「動物愛護法」の規定では、もともと野外で自活していた野良猫に避妊去勢手術を施し、完全に麻酔が醒めたのちに元の生息地に戻す行為は「遺棄」にはあたりません。ですので、RTFは法的には可能です。どちらかといえば、地域住民の理解が得られにくいのが問題です。せっかく野良猫がいなくなったと思ったのに、戻されるのは地域住民にとってあまり気持ちいいことではありません。自治体としては、余計な仕事が増えるのであまりやりたくはないでしょうね…。