長きにわたり、アニマルシェルターへの動物の出入りについて、そしてシェルターに入る動物をどうやって減らしていけばよいかについて見てきました。今回からは、シェルターへの動物の出入りを管理するための統計指標について見ていきたいと思います。
なぜ数値化が必要か
あらゆる事業にいえることですが、実績を数値化することにはさまざまなメリットがあります。
(1) 具体的に「やるべきこと」が見えてくる
ただ漠然と「シェルターの収容動物を減らしたい」「安楽殺を減らしたい」と思っていても、具体的に何をすればいいかわからない、もしくは一般論的に「よさそうな」ことをやみくもに実施することになりかねません。様々な指標を用いてシェルターへの動物の出入りを数値化してみると、何が問題で何をすべきかが見えてきます。例えば野良猫の収容数が多く、思うように譲渡が進んでいないという数値が示されれば、RTFを試してみる、地元のTNR活動を支援するといった対策が見えてきます。
(2) シェルター事業の検証
月次の統計指標の変化を見ていくと、それがシェルターの慢性的な問題によるのか、季節的なものなのか、または一時的なものなのかが見えてきます。また年次の統計を経時的に見ていくと、現在シェルターが置かれている状況が見えてきます。またシェルターが何かの事業を実施した時の数値の変化により、その事業の効果を検証することもできます。
(3) 外部への説明
シェルターの多くは公営、もしくは非営利団体によって運営されています。そのためシェルターの事業について外部に説明しなければならないことも多いのですが、その際には多くの場合、事業の成果についての数値の提示が求められます。
数値化のデメリット
もちろん数値化にはデメリットもあります。
(1) 数値が「独り歩き」する
後述しますが、シェルター統計の数値にはさまざまな前提条件があります。それぞれの数値はシェルターの運営母体や規模、地域の特性など、さまざまな要因によって変化します。そのため、数値は傾向の把握やシェルターの内部検証にのみ使用し、数値を単純にシェルター同士で比較することは慎まなければなりません。
(2) 数値が目的化する
まさに「殺処分ゼロ」がそうなのですが、目指すべき理念が数値として示されると、いつの間にか達成目標とされ目的化してしまいます。そうなると人間はその数字しか見なくなり、その数字を達成することしか考えなくなります。
しかしながら、デメリットを理解しながら数値化を実施していくことには大きなメリットがあります。