前回、アニマルシェルターへの動物の出入りについて数値化することの重要性について述べましたが、では具体的にどのようにデータを管理していけばよいのでしょうか。
収集すべき数値
シェルターで収集すべき最低限のデータは「受入数」「返還数」「譲渡数」「移送数」「安楽殺数」「収容中死亡数」です。シェルターにおいては収容動物の個体別データが管理されているはずですから、そこからデータを引っ張ってきて、動物種および年齢ごとに集計します。年齢といっても「成熟個体」「幼齢個体」「不明」の3区分で十分です。ちなみに「幼齢個体」の定義は米国では「5か月齢未満」、日本では「離乳前」とすることが多いようです。
データの加工と保存
収集したデータはそのまま「生」のデータとして用いることもありますが、例えば「返還率」を求めるといった統計処理をすることもあります。そのためデータはデジタルで、しかも表計算ソフトやデータベースソフトで管理することが望ましいといえます。米国では個体情報管理を含めアニマルシェルターに特化したソフトがいくつかありますが、一般的な表計算ソフトでも十分です。ASV(シェルター獣医師会)のガイドラインでは、アクセスの便利さやデータ破損に備え、クラウドベースのソフトが望ましいとされています。
データの収集
米国:かつて米国においてはアシロマ協定(健康な動物の安楽殺を廃止することを目指した動物譲渡関係者の協議会)がMaddie's Fund(シェルターメディスンを支援する民間の動物福祉財団)の支援を受け、「アシロマデータ」としてシェルターデータの収集を試みてきましたが、そこにASPCA(米国動物虐待防止協会)やHSUS(米国人道協会)などが加わり、2012年に“Shelter Animals Count”(https://www.shelteranimalscount.org)というデータベースが立ち上がりました。収集されたデータは州や郡といった単位での傾向の把握に利用され、データはインターネットで公開されています。
日本:日本においては現在のところ、民間を含めたアニマルシェルターのデータを一括収集するような組織はありません。各自治体による動物の引取りや処分のデータは年度ごとに環境省に報告することとされていて、収集されたデータは「動物愛護管理行政事務提要」として公開されています。ここでは各自治体毎のデータが示されています。各種統計指標を算出するための基礎データが網羅されている、なかなか良質のデータなのですが、ついつい「殺処分数」にのみ目が向き、自治体間の比較に用いられるという残念な使い方が横行しています。単純に「殺処分数」にのみ目を向けるのではなく、犬が多いのか猫が多いのか、また成熟個体が多いのか幼齢個体が多いのかといった統計分析に利用すれば、とるべき対策が見えてくるはずです。まあそもそも、各自治体がそういう観点でデータを扱っているとは到底思えないのですが。