収容した保護動物を、譲渡や返還などにより生きたまま解放する(ライブリリース)ことは、アニマルシェルターにとっての「成功」といえます。アニマルシェルターの「成功」を評価する指標として、「ライブリリース率(live release rate:LRR)」がよく用いられます。
ライブリリース率の算出
LRRにはいくつかの算出方法があります。そのため、しばしば“LRRs”という表現も用いられます。一般的によく用いられるLRRは次の2種類です。
アシロマ協定のLRR(ここでは「アシロマLRR」と呼びます)
アシロマ協定(健康な動物の安楽殺の廃止を目指す動物譲渡関係者の団体)は、LRRを「譲渡や安楽殺など何らかの「結果」を迎えた保護動物のうち、ライブリリースされた動物の割合」※と定義しています。
具体的に数字でお示ししましょう。仮にこのような「のらぬこシェルター」があったとします。
年間受入れ数:1,000頭
ライブリリース数(返還、譲渡など):800頭
安楽殺数(収容中死亡を含む):150頭
処分保留数(未譲渡や長期ケアのため引き続きシェルターに滞在している動物数):50頭
この場合、アシロマLRRは800/950=0.842、つまり84.2%となります。
アシロマLRRはLRRの計算法としては妥当ですが、受入れ数を減らしてもそれが数値に反映されないという欠点があります。
ASPCAのLRR(ここでは「単純LRR」と呼びます)
アシロマLRRの欠点をカバーするため、ASPCA(米国動物虐待防止協会)はLRRを「シェルターが受け入れた動物のうち、ライブリリースされた動物の割合」と定義しています。
上記の例で計算すると、単純LRRは800/1,000=0.8、つまり80%となります。
単純LRRはLRRとしてはやや不正確ですが、受入れ数が数値に反映されます。例えばライブリリース数に変動がなくても、受入れ数を減らせばLRRは上昇します。シェルターの事業評価には、この方がよいかもしれません。
救命率(save rate)
LRRに似た概念として、どれだけの数の動物の命を救うことができたかという「救命率」というのもあります。ASPCAの定義によると、救命率は「シェルターが受入れた動物のうち、安楽殺を免れた動物の割合」です。上記の例で計算すると、救命率は(1,000-150)/1,000=0.85、つまり85%となります。
※正確に言えば、アシロマLRRは「結果」数から「飼い主の希望により安楽殺したペットの数」を除外します。そしてその理由が「健康上の理由」か「それ以外」かによって計算式が変わります。そのためアシロマLRRは2種類あります。日本の行政機関やシェルターはペットの安楽殺サービスを行っていない(はず)ですから、話を単純にするため、ここは省略しました。